非専門医のための白内障まとめ〜ガイドライン, 分類, 疫学, 原因, 症状, 診断, 治療, 予後

 

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村上 沙穂(むらかみ さほ)
    2015年岡山大学卒。倉敷中央病院での初期研修を経て、「人生の満足度や幸福感、快適さを最大限に高めたい」とのビジョンから「美しい世界を見る目を守る」ことをミッションに慶應義塾大学眼科へ入局。その後都内病院で眼科医として日々奮闘中。
    眼科啓発を目的としたキャラクター 「めめりん」生みの親。
    京都大学経済学部卒。日本医師会認定産業医。

白内障は加齢が主な原因であり、日常診療においてしばしば遭遇する眼科疾患です。

ここでは非専門医に向けて、白内障のガイドライン、分類、疫学、原因、症状、診断、治療、予後について解説します。
また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

非専門医のための白内障まとめ〜ガイドライン, 分類, 疫学, 原因, 症状, 診断, 治療, 予後〜

北里大学北里研究所病院 眼科 村上 沙穂

1. ガイドラインについて

日本の白内障診療ガイドラインは、2002年3月に厚生労働省研究事業として作成された白内障診療ガイドライン(科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究)を1件認めるのみです。ガイドラインには、白内障分類と疫学、危険因子、手術適応と視機能、手術、糖尿病白内障、薬物療法について記載されています1)

2. 分類

白内障は混濁病型分類として、以下の3主病型があります。

  • 核白内障
  • 皮質白内障
  • 後嚢下白内障

臨床現場ではこれら3主病型を程度別に分類することで評価する方法が用いられています。

<順に「核白内障」「皮質白内障」「後嚢下白内障」(文献2より)>

その他に副病型として、前嚢下混濁、retrodots, water clefts, focal dots, vacuoles, fiber folds, coronary cataract、クリスマスツリー混濁などがあります1)

臨床で良く使われる分類として、核白内障の硬度と色調を分類したEmery-Little分類があります。白内障手術前の核混濁の程度判定に用いられ3)、手術難易度を推定します。核混濁が強いほど核硬度が高いと判断され、手術難易度が上がります。

<核硬度:Emery-Little分類 文献4より>

Grade

核硬度(色合い)

1

Soft(透明〜乳白色)

2

Semi soft(白〜淡黄色)

3

Medium(黄色)

4

Hard(茶色がかった黄色)

5

Rock hard(茶〜黒色)

3. 疫学

水晶体混濁の有所見率は全ての人種で加齢に伴い増加します。

日本での初期混濁を含めた有所見率は50歳代37〜54%、60歳代66〜83%、70歳代84〜97%、80歳以上で100%、進行した水晶体混濁の有所見率は50歳代で10〜13%、60歳代で26〜33%、70歳代で51〜60%、80歳以上では67〜83%と報告されています5)

<白内障の疫学 文献5を参考に作成>

年代

有病率

 

初期混濁を含めた有病率

進行した水晶体混濁の有病率

50歳代

37〜54%

10〜13%

60歳代

66〜83%

26〜33%

70歳代

84〜97%

51〜60%

80歳以上

100%

67〜83%

4. 原因

混濁の主な原因は加齢です。加齢以外にも多数の因子が絡みあって白内障となります1,6)

・喫煙
・紫外線
・薬物(ステロイド、フェノチアジン系薬、ブチロフェノン系薬、ブスルファン、アロプリノールなど)
・過剰飲酒
・糖尿病
・アトピー
・外傷
・放射線
・その他の全身疾患(代謝異常、筋骨格異常、皮膚疾患、腎疾患、神経疾患など)

一方、先天的な素因によって起こる白内障もあります。生直後〜生後3ヶ月以内に発症するものを先天白内障、生後進行し生後4ヶ月以降に発症するものを発達白内障と呼びます。

原因として遺伝性、子宮内感染(CMV、風疹、トキソプラズマなど)、代謝異常(ガラクトース血症など)、染色体異常のほか様々な全身疾患・症候群に伴って起こるもの、その他特発性があります。

生直後からの強い白内障においては、臨界期(視機能が発達する時期)を過ぎるとその後の視機能獲得が限られてしまいます。片眼性では生後6週、両眼性では12週以内の白内障手術が視機能向上には望ましいと言われています7)

5. 症状

白内障の病型や程度により、 下記のような症状を生じます1)

・視力低下
・霧視
・羞明
・単眼複視
・コントラスト感度の低下

水晶体核部の硬化は調節力を低下させます。

症状は極めて緩徐に進行するため、患者の多くは比較的高度に視力低下するまで自身の視機能低下を自覚しないことも多いです8)

6. 診断

極大散瞳下で細隙灯顕微鏡により水晶体混濁の評価を行い、診断します8)

核混濁の程度判定にはEmery-Little分類を用いることが多く、その他に皮質混濁、後嚢下混濁、前嚢下混濁、retro dots、water cleftsなど水晶体混濁の病型・程度を把握することが重要です。

<核硬度:Emery-Little分類 文献4より>

Grade

核硬度(色合い)

1

Soft(透明〜乳白色)

2

Semi soft(白〜淡黄色)

3

Medium(黄色)

4

Hard(茶色がかった黄色)

5

Rock hard(茶〜黒色)

7. 治療

・手術

水晶体混濁や視機能低下が進行し、手術により視機能改善が術後期待できる症例は手術適応となります。
また、狭隅角(浅前房)の方は、急性緑内障発作の危険性もあるため早めの手術を勧めます。

現在の成人の白内障手術の主流は超音波装置による破砕吸引(超音波乳化吸引術)です。症例によっては水晶体嚢外摘出術、嚢内摘出術で手術を施行すべき時もあり、症例に合わせて術式を選択します1)

眼内レンズは、従来の単焦点眼内レンズに加え、トーリック(乱視矯正)や多焦点など付加価値を有する眼内レンズも開発され視機能向上の選択肢が増えています。

多焦点眼内レンズは、現在本邦では保険外診療で治療が受けられます。近方と遠方の2箇所にピントを合わせることができる遠近二焦点レンズを例にとると、デメリットとしては単焦点レンズと比較して光が分散しコントラストが低下すること、暗所時にライトが滲んで見える「ハロー」や「グレア」という現象が生じやすくなること等が挙げられます8)。その他、遠中二焦点レンズや三焦点レンズなどもあります。

職業や個人の性格、生活スタイルによって向き不向きがあるため、個々人に合わせた選択と十分なインフォームドコンセントが必要です。

手術は術後の麻酔による全身的影響の少ない局所麻酔を選択することが一般的ですが、コミュニケーション困難な症例や術中体位の保持が難しい症例、認知機能低下の著しい症例など、症例に合わせて全身麻酔を行うこともあります1)

・薬物

現在のところ、白内障の薬物療法に関して、点眼薬・内服薬ともに十分な科学的根拠を持つ有効な薬物はないとされています1)

8. 予後

白内障単独症例に対して手術を行うと、95.5%の症例で20/40(0.5)以上の視力を得ることができます9)

合併症

後発白内障

白内障術後、数ヶ月以上経過した頃に水晶体嚢が白く混濁する、術後最も頻度の多い合併症です。混濁により眼内に入る光が遮られ、再び白内障になったような症状が起こります。瞳孔にかかると視機能に影響するため、視力低下の原因となります。治療は、YAG laserを照射し、混濁した水晶体嚢に穴を開けます。外来で施術でき、一度混濁を取り除けば再発はしません1,10

<後発白内障 文献10より>

そのほかの合併症としては、眼内炎、駆逐性出血、後嚢破損などもあります。また、眼内レンズの度数には多少の誤差が生じることもあります。

白内障手術の効果

白内障手術の効果は視機能の改善だけにとどまらず、その延長として、実際に患者さん自身の日常生活も大きく改善するということが明らかになっています。白内障術後には視覚関連QOLが改善し、歩行速度の増加11)、転倒リスクや骨折の減少12)、睡眠13,14)や認知機能や抑うつ状態の改善などが報告されています。更に非常に高い費用対効果(費用効用分析)も認められており、白内障手術は患者さんのQOLに加え社会全体の生産性に貢献しているとも言えます15)

最後に

 白内障手術は他の手術と比べると全身への侵襲性が少なく、比較的短時間で終わるため、「絶対安全で簡単な手術というイメージ」を持っている患者も中にはいます。他部位の手術と同様に、しっかりと術前の検査やリスクを含めてインフォームドコンセントを行なっています。

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9 参考文献

  1. 科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究(H13-21EBM-012)
  2. Arch Ophthalmol. 1993 Jun;111(6):831-6.
  3. Phacoemulsification and aspiration of cataracts: Surgical techniques, complications, and results. pp.45-48, CV Mosby, St Louis, 1979
  4. Dokkyo Journal of Medical Sciences 35(3):251〜258,2008
  5. The Journal of the Japanese Society for Cataract Research 13: 13-20, 2001
  6. Surv Ophthalmol. 1995;39(4):323.
  7. 臨床眼科. 2015;69(5): 614-617.
  8. 今日の眼疾患治療指針 第3版. 2016: pp.378-379.
  9. Arch Ophthalmol. 1994;112(2):239.
  10. Arch. Ophthalmol. 127(4), 2009, 555-62.
  11. The Journal of the Japanese Society for Cataract Research 28 : 27-30. 2016
  12. Age Ageing 43 : 341-346, 2014
  13. Physiol Anthropol 29 : 219-224, 2010
  14. Rejuvenation Res. 2014 Aug 1; 17(4): 359–365.
  15. Jpn J Ophthalmol. 2013 Jul;57(4):391-401.
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    2015年岡山大学卒。倉敷中央病院での初期研修を経て、「人生の満足度や幸福感、快適さを最大限に高めたい」とのビジョンから「美しい世界を見る目を守る」ことをミッションに慶應義塾大学眼科へ入局。その後都内病院で眼科医として日々奮闘中。
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