2018/09/22

心肺蘇生患者マネジメント〜蘇生中止基準, 心エコー, EtCO2 , 家族への病状説明〜

 

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坂本 壮(SAKAMOTO SO)
    2008年順天堂大学医学部卒。順天堂練馬病院での初期研修を経て,10年に同院救急・集中治療科入局。11年,13年ベストチューター受賞。「何でも診られる医師」になるための経験を積むべく,15年より西伊豆健育会病院に勤務(現在は非常勤)。17年より現職。
    ■■救急科専門医,集中治療専門医,総合内科専門医,ICLSインストラクター。
    ■■著書『救急外来ただいま診断中!』(中外医学社)『ビビらず当直できる内科救急のオキテ』(医学書院)『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』(シーニュ社)

ER、病棟、院外、様々な場所で出会う可能性のある心肺停止。いったい何を目安に心肺蘇生を続けるべきなのでしょうか。 

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中から研修医におすすめの選りすぐりの内容を、ご紹介します!

心肺蘇生患者マネジメント〜蘇生中止基準, 心エコー, EtCO2 , 家族への病状説明〜  

CPR時間についてです。 

先日心肺蘇生することがあり思ったのですが 、心静止になってから、胸骨圧迫の持続時間の目安ってあるのでしょうか?

整形外科7年目

年齢、By standerの有無、最終確認時刻にもよるかと思います。 

院内で比較的CPRまでの時間が短いのか、院外で発見される数時間とか前にすでに止まっているのかで話は変わると思いますが、眼前CPAの場合、だいたい20〜30分が目安かと思います。 

当院は4分おきにアドレナリン投与にしているので5A分5アンプルぶんやっても戻らなければ蘇生行為の中止を検討します。

救急科

以前のガイドラインでは30分というのが一つ目安にはなっていましたが現在明確な時間はありません. 

参考になる所見としてはEtCO2の値があげられます. これが10mmhgをきっている場合にはROSC不能と考えられています. 

実際私は現場からROSCすることなくunshockable rhythmのまま30分継続したら蘇生は残念ながら困難と判断しています.

もちろん家族の到着や理解も考慮しますが. 

ひとつ言えることは、院内の共通理解をもっておくことが重要だと思います.

坂本 壮

CPAに関しては、その原因や初期波形、witness, by stander CPRの有無など、予後に関連する項目がいくつもあるため、全てに一般化することは難しいです。 

しかし、観察研究において、CPRの時間が30分を超えると蘇生する可能性がほぼゼロになることと、院内CPAですら15分のCPRで蘇生した際に、良好な神経学的予後になるのは2%以下であるというデータがあり、平均的には30分程度で終了としていることが多いかと思います。 

そして、やはり家族や他の医療関係者(特に主治医)の理解が必須ですので、蘇生が厳しいと判断してから、それぞれに説明をして現実的な折衷案を提示することが多いかと思います。その結果、院内CPAや若年者のCPAが平均より長くCPRを行われることが慣習的には多いと思います。

救急科

Dr.Sakamotoの “ポイントレクチャー”

ここでは心肺停止患者への胸骨圧迫に関して、蘇生中止の基準(心電図、心エコー、EtCO2)や初療にあたるための情報収集、ご家族への説明について解説します。

 順天堂大学練馬病院 救急・集中治療科/西伊豆健育会病院 内科 坂本 壮

症例 84歳男性

自宅の浴槽内で反応が乏しい状態で家族が発見し救急要請. 救急隊が到着し, 心停止を確認. 波形は心静止であり当院へ受け入れ要請あり. 現場から胸骨圧迫, 酸素投与を行った状態で来院した. 救急隊到着時から病着までの15分の間, 一貫してモニターでは心静止の状態. 付き添いの家族は困惑している状態である. 

この患者に対して, いつまで胸骨圧迫を継続するべきだろうか?

心停止患者に対する胸骨圧迫をいつまで続けるべきなのか?これは非常に難しい問題です. みなさんも心拍が再開する見込みがほぼゼロと考えても, ひたすら胸骨圧迫を行い続けたことがあるのではないでしょうか. 続けるべき定められた時間はありませんが, いくつか知っておくべき事実があります. それを元にご家族に丁寧に現状を説明し, ご理解いただくしかないでしょう. 

1. 蘇生中止の基準となるのは目撃の有無と初期波形

心停止患者において, 重要なことは, 心停止に至ってからいかに速くCPR, 特に胸骨圧迫を開始できるかにつきます.

適切な胸骨圧迫(位置:胸骨下半分, 回数:100回/分以上120回/分未満, 深さ:5cm以上〜6cm未満, 適切な圧迫の解除)を行っても, 心停止から10分経過してしまっては蘇生の可能性はゼロ, 少なくとも社会復帰は期待できません. そのため, 目撃者の有無, そしてbystander CPRの有無が予後に直結します. 

初期波形も重要です. shockable rhythm(VF, VT)の場合には, unshockable rhythm(心静止(asystole), PEA)と比較し蘇生の可能性があります. 

以上から, 目撃のない心停止患者で初期波形が心静止, PEAの場合には蘇生の可能性は低いのです. 

2. 心エコー所見

エコーが救急外来など初療室に置いてある施設も多いと思います. 波形は心静止のようにみえても, 実際はVFなどのshockable rhythmの場合があります. モニターの感度を上げ対応することが推奨はされていますが, エコーがあって心臓に当てれば心収縮は一発で判断可能です.

実際にエコーをあて, 心臓の自発的収縮が認められなければ, 波形と合わせて心静止と速やかに判断可能です. また, その際, 覚知(発見者が救急隊を呼んだ時間)からは15分以上経過していることがほとんどであるため, 心停止からある程度時間が経った段階で心静止ということとなり, これもまた蘇生中止の1つの目安となります. 

3. ETCO2

これら以外に患者が気管挿管をしている場合には, ETCO2(end tidal CO2, 呼気終末の肺胞内CO2濃度)が1つの基準となります. ETCO2は肺血流に依存するため, 心停止時には上昇せず, 10mmHgに満たない場合には, 蘇生の可能性が低いことが示されています. しかし, 現状全例挿管するわけではなく, またどこの施設でも測定できるわけではないので, まずは前述した内容を把握し対応するのが現実的と考えます. 

4. 家族への病状説明

そして最も重要なことは, 家族の理解でしょう. 本人の事前指示があり, ご家族の同意がある場合には悩みませんが, 患者背景に依らず, 方針が決定していない場合には, すぐに死を受け入れるのは困難です. いくら, 心拍再開の可能性が低いことを説明しても, 高齢者であっても, 「なんとかしてください」と懇願されることは少なくありません. 私が心掛けている点は以下の通りです. 

4.1 病着前に可能な限り情報を集めておく

救急外来において心肺停止患者が来院する場合には, 要請から少なくとも数分から10分程度の時間があります. その間に, 気管挿管や除細動の準備, 人材の確保はもちろんですが, 患者の情報がカルテや主治医から確認できる場合には根こそぎ集め病状を把握します. そうすることで, 患者の抱えている病気や急変のリスクを把握するだけでなく, いままでの病状説明内容やkeypersonを同定することが可能となります. 

 4.2 病状説明はとにかく丁寧に行う

家族は動揺していることが多いでしょう. こちらが落ち着いて説明しなければまず理解されません. また医療従事者でない限り, 医学用語は通じません. 胸骨圧迫というより家族へは心臓マッサージと言った方が伝わることも多いでしょう. 気管挿管や人工呼吸器がなんなのかもよくわからないのが普通です. きちんとイメージがわくように説明の仕方を練習しておく必要があります. 

4.3 短時間であっても頻回に病状説明を行う

救急搬送された後, 患者は処置室, 家族は待合室で待機することが多いと思います. しかし, ここで家族を長時間待たせてはいけません. たった10分と思うかもしれませんが, その際の10分は1時間以上にも感じることと思います.

現場から病着までの状況, 波形, エコー所見を瞬時に確認し, CPRの人員が確保できていれば, その場のリーダーはCPRを監督しつつ, 必ずご家族への病状説明も忘れてはいけません. そんな時間はないと思うかもしれませんが, 数分でいいので説明することが大切です. その繰り返しです. 長い間待たされ, 「残念ながら..」と説明するよりも, 「〜という状況で厳しいです. → やはり回復の見込みはないと考えます.」と説明した方がご家族も話し合う時間があり, 理解していただけると思います. 

実際に, 私は心停止や重症患者に対する家族への病状説明では, なるべくこのように数分ですが頻回に話し, また自身の家族であっても同様の処置を行うことを伝え, 現状を理解してもらっています. 

小児など若年者の心停止では, そうはいってもなかなか手を止めるのが困難なこともあるでしょう. そのような場合には, 初期・後期研修医や入局したての医師の場合には, 上級医に相談し病状説明を共に行うことも重要です. 相談する人がいない場合には仕方がありませんが, いるのであればしない理由はありません. また, 明確な時間設定はできないのが現状なため, 病院毎に一致した見解を持っておくことも必要だと思います. 是非一度話し合ってみて下さい. 

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また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

参考文献

  1. Circulation. 2015 Nov 3;132(18 Suppl 2):S315-67.
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坂本 壮(SAKAMOTO SO)
    2008年順天堂大学医学部卒。順天堂練馬病院での初期研修を経て,10年に同院救急・集中治療科入局。11年,13年ベストチューター受賞。「何でも診られる医師」になるための経験を積むべく,15年より西伊豆健育会病院に勤務(現在は非常勤)。17年より現職。
    ■■救急科専門医,集中治療専門医,総合内科専門医,ICLSインストラクター。
    ■■著書『救急外来ただいま診断中!』(中外医学社)『ビビらず当直できる内科救急のオキテ』(医学書院)『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』(シーニュ社)
 

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