2018/09/22

カテーテル関連尿路感染症のマネジメント 〜鑑別疾患, 症状, 培養検査結果の解釈, 原因菌, 診断, 予防〜

 

この記事を書いている人 - WRITER -
原田拓(はらだ たく)
    ■■昭和大学病院総合診療科 助教 獨協医科大学病院総合診療科 非常勤スタッフ医師
    ■■所属学会:内科学会/プライマリ・ケア連合学会/病院総合診療医学会 東京GIMカンファレンス世話人 関東若手医師フェデレーションSV 内科学会 診断プロセス向上WGメンバー
    ■■色々な会で色々な人に出会い様々な刺激をいただいてます。現在は老年医学,診断プロセス,ノンテクニカルスキルに興味があり,日々プルスウルトラの精神で楽しく過ごしています!!

入院後の尿路感染症. 定義は入院後何時間? 入院した患者さんに新規に発症する尿路感染症. 様々な状況が考えられますが, どのように対応するのでしょうか.

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中からプライマリケア医におすすめの内容を、ご紹介します!

カテーテル関連尿路感染症のマネジメント 〜鑑別疾患, 症状, 培養検査結果の解釈, 原因菌, 診断, 予防〜

院内UTI尿路感染症に関する質問です。

院内肺炎HAPについては入院後48時間以降の肺炎と定義されておりますが、院内尿路感染について同じような時間目安はありますでしょうか。

入院した患者の熱発でUTI尿路感染症が疑わしい場面で尿グラム染色行なったところ、GNRが見えたとします。2つの可能性

  • 大腸菌による単純性尿路感染
  • SPACEによる複雑性尿路感染

があると思います。

SPACE
●S: Serratiaセラチア
●P: Pseudomonas緑膿菌
●A: Acinetobacterアシネトバクター
●C: Citrobacterサイトロバクター
●E: Enterobacterエンテロバクター

後者のリスクとして、参考書には以下が挙げられます。

  • 最近の抗生剤投与
  • 院内発症
  • 尿カテーテル挿入
  • 糖尿病がある
  • 前立腺肥大など通過障害がある

このうち、院内発症のみ判断が難しいと思ったのです。単純性尿路感染の持ち込みなのか、院内で真に発症したのか、その区別に有用な入院期間はあるのでしょうか…

初期研修医1年目

SPACEによる複雑性尿路感染に該当するものとわりきってしまうと結局ほぼ全ての症例でSPACEをカバーしなくてはいけなくなると思います.

これらはあくまで目安で他に判断材料がないときに使用するものと考えておくのがよいでしょう.

それよりもグラム染色所見や以前の培養結果, 重症度に重きをおき抗菌薬を選択するのがよいと思います.

あとは必自身が働いている病院のアンチバイオグラムを考慮し対応することですね.

救急11年目

IDSAにあるCRUTIカテーテル関連尿路感染症の定義は

  • 入院中にカテが48時間以上留置され、ほかにフォーカスがなく、10の三乗の菌が尿から出ている

なので、カテ留置して48h、が一つの目安かと思います。

総合診療科9年目

Dr. Haradaの “ポイントレクチャー”

病棟で出会う入院患者のカテーテル関連尿路感染症Catheter-associated urinary tract infection:CRUTI。ここでは鑑別診断、細菌尿と尿路感染症の違い、CRUTIの症状、検査、原因菌、診断、予防について解説します。

原田 拓(HARADA TAKU)

昭和大学病院総合診療科 助教
獨協医科大学病院 総合診療科 非常勤スタッフ医師

1. 医療関連の菌血症の20%は尿路由来で死亡率は10%

カテーテル関連尿路感染症Catheter-associated urinary tract infection:CRUTIは院内発症でみられるコモンな合併症の1つであり,医療関連の菌血症の20%は尿路由来で死亡率は10%(1)ともいわれています。そのため予防もふくめしっかり押さえておくべき疾患の1つです。

2. 鑑別疾患は肺炎などの感染症と肺塞栓などの非感染症に分けて考える

入院患者の発熱でコモンな疾患といえば

感染症
●肺炎
●尿路感染症
●カテーテル関連血流感染
C.difficleクロストリジウム・ディフィシル感染症
●創部感染
非感染症
●静脈血栓症
●肺塞栓
●偽痛風
●薬剤熱
があげられ,

上記以外に

  • 褥瘡
  • 輸血後
  • 血管カテーテル後
  • 術後

など、患者さんの状況に応じて鑑別疾患を考えます。

CRUTIカテーテル関連尿路感染症の定義としては「入院中に尿道カテーテルが48時間以上が留置され,他に原因がなく,10の3乗の菌が検出されている」になります(2)

コモンな疾患でありながら「他の原因がなく」とあるように除外診断が重要なのがこの疾患の難しいところです。なお、カテーテル抜去後でも48時間以内であればCRUTIカテーテル関連尿路感染症となります(2)

3. 細菌尿があるのと尿路感染症があるのは別

尿道カテーテル留置で1日あたり3-10%で細菌尿を生じ,細菌尿がある中で10-25%がUTI尿路感染症を発症します。(1)細菌尿があるのと尿路感染症があるのは別の話です。

カテーテル留置による尿路感染症の発生率は1.4-2.8/1000カテーテル×日での発症(3,4)といわれています。危険因子として下記があげられています。

危険因子
●女性
●高齢者
●ドレーンバッグでのコロニー形成
●カテーテルケアのエラー(滅菌操作の不十分など)

なお紫色の尿バッグ症候群CRUTIカテーテル関連尿路感染症とは関係ありません。(1)

4. CRUTIカテーテル関連尿路感染症の症状

繰り返しますが細菌尿があるのと尿路感染症があるのは別の話です。

CRUTIカテーテル関連尿路感染症最も多い症状は発熱です。その他に

  • 腹部や恥骨上の不快感
  • CVA叩打痛
  • カテーテルの閉塞

非特異的な症状として, せん妄ふくむ感染症による全身症状をきたします。(1)

ただし尿道カテーテル留置後でも18%に発熱,6%は排尿障害,6%は尿意切迫があり尿道カテーテルがない人と有意差がなかった(5)という報告もありCRUTIカテーテル関連尿路感染症の診断はなかなか難しく,混濁した尿や悪臭のする尿もそれ単独ではUTIとの関連はないです(2)。したがって他の疾患を除外することが重要になってきます。

5. 尿培養検査結果の解釈

検体採取は留置カテーテルを取り除き中間尿で出すのが理想です。カテーテルが必要であればカテーテルを交換して検体をとりましょう。

膿尿はカテーテル留置患者ではよくみられる所見ですが細菌尿があるのと尿路感染症があるのは別の話になります。基本的には培養検査で10の5乗以上で陽性なる。10の2乗以下であればCRUTIカテーテル関連尿路感染症っぽくないです。(1)

診断基準としては

入院中に尿道カテーテルが48時間以上が留置され,他に原因がなく,10の3乗の菌が検出されている
になります(2)

6. 原因菌は大腸菌、クレブシエラ、腸球菌など

原因菌で多いのは市中の尿路感染症で多い大腸菌やクレブシエラになりますがCRUTIカテーテル関連尿路感染症だと他の菌も起因菌になります。

ある研究(6)では原因菌の内訳は大腸菌(27%),クレブシエラ(11%),腸球菌15%),カンジダ(13%),緑膿菌(11%)されています(6)(実臨床でここまでカンジダのUTIがあるという実感はなく,ほとんどが大腸菌,クレブシエラ,たまにSPACE属という感じがするので…Populationにもよると思います)。院内発症のため緑膿菌,通常は尿路感染症をおこさないカンジダもデバイス中であれば原因菌として考慮する必要があります。

誤解を招くといけないのでカンジダの尿路感染症に関して補足します。

基本的にカンジダは尿路感染症を起こしません。尿培養からカンジダが検出されても保菌や汚染のことがほとんどで,カンジダ尿症から菌血症にいたる割合は1.3%と稀です(7)。個人的な経験からいうと上記の1.3%という数字には違和感を覚えますが…カテーテルがあればカンジダによる感染症が起こりうることは覚えておいて良いと思います。

7. 診断はUTI尿路感染症に一致する所見+発熱の原因が他にない時

膿尿自体はカテ留置患者でよくあります。繰り返しになりますが,細菌尿があるからといって尿路感染症が成立しているかどうかは別の話です。ただし膿尿がなければCRUTIカテーテル関連尿路感染症の可能性はとても低いと考えられます。

CRUTIカテーテル関連尿路感染症の診断はUTI尿路感染症に一致する症状や徴候があったり,発熱の原因が他にないときに成立します。繰り返しになりますが膿尿や尿所見や尿の臭いなどの所見単独での診断は好ましくないです。

8. 予防は患者のデバイス一覧のチェックから

いうまでもないがデバイス関連の感染症はその予防が最重要です。CRUTIカテーテル関連尿路感染症の予防は

●不必要なカテーテルの回避
●無菌操作
●カテーテルの早期抜去
になります。CRUTIカテーテル関連尿路感染症に対する予防介入により2.82/1000カテ×日で2.19に減少したという研究があります(4)。普段の診療から担当患者のデバイス一覧をチェックする癖や毎日のRoundの時にこのデバイスは必要なのか?と日々考える癖をつけることが大事です。

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9. 参考文献

  1. Catheter-associated urinary tract infection in adults UPTODATE(2018/08/01アクセス)
  2. Clin Infect Dis 2010; 50:625.
  3. Am J Infect Control 2013; 41:1148-66.
  4. N Engl J Med. 2016 Jun 2;374(22):2111-9.
  5. Arch Intern Med. 2000;160(5):678.
  6. Infect Control Hosp Epidemiol 2013; 34:1. 
  7. Clin Infect Dis. 2005;41 Suppl 6:S371-6
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原田拓(はらだ たく)
    ■■昭和大学病院総合診療科 助教 獨協医科大学病院総合診療科 非常勤スタッフ医師
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