2018/09/22

DAPT (Dual Anti-Platelet Therapy)〜定義, 薬剤選択, 治療期間〜

 

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三浦 光太郎(みうら こうたろう)
    ■■慶應義塾大学医学部循環器内科
    ■■所属学会:日本循環器学会、日本成人先天性心疾患学会、日本心血管インターベンション治療学会等
    ■■循環器の中でも特に成人先天性心疾患のカテーテル治療に興味があります。現在、病院で心房中隔欠損症・動脈管開存症・卵円孔開存等の疾患の治療を研修させていただいております。ホットトピックとして卵円孔開存と奇異性脳梗塞の関連や治療(カテーテル治療)等に興味があります!
PCI経皮的冠動脈形成術後、抗血小板剤を2剤併用するDAPTDual Anti-Platelet Therapy. その後, どのように考えて調整していけばよいのでしょうか.

DAPT (Dual Anti-Platelet Therapy)〜定義, 薬剤選択, 治療期間〜 

PCI経皮的冠動脈形成術後のDAPTDual Anti-Platelet Therapyについて質問です。

現在DAPTは6ヶ月〜1年間継続したら、1剤に減らすという認識で良いでしょうか。(2017年5月時点)

担当している患者さんが10年前にPCIを施行し、現在もバイアスピリンとパナルジンを内服していたため、バイアスピリン単剤に変更してみました。

またバイアスピリン単剤よりもプラビックス単剤の方が良いなどありますでしょうか。

内科4年目

原則その認識でいいと思いますが, ときに循環器の先生はカテ所見などから2剤残すこともあります.

本症例は10年前なので1剤でよいと思いますが, 最近の場合には施行した循環器医に所見を聞いて意見をもらったほうがいいとは思います.

救急医11年目

いつも10カ月〜一年くらいで何らかの検査(CT、運動負荷、負荷シンチ、CAG冠動脈造影検査など)をして問題なければ1剤にしてます。短期間DAPTDual Anti-Platelet Therapyについてはいろいろスタディ進行中のようですが、まだ1年がスタンダードと思います。LMT左冠動脈主幹部や小径ロングのステンティングの場合には不具合なければ2剤のままにしている先生も多いかと思います。

抗凝固薬との併用の場合にバイアスピリンではなくプラビックス残すことが多いです。

循環器内科8年目

10年前にPCIを施行され、1年前に別の病院でfollow up CAG冠動脈造影検査を施行された方で、安定していると伺ってはいるそうですが、その後もDAPTDual Anti-Platelet Therapyが継続されているので、確認した方が良さそうですね。

SAPTSingle Anti-Platelet Therapyでも良ければ、プラビックス検討してみます。

内科4年目

少し補足ですが、少し前にプラビックス残しかバイアスピリン残しなのかという問題がありました。

バイアスピリンは胃潰瘍の原因となるが安いです。

プラビックスに関しては、CYP2C19という代謝に関する酵素のpoor metabolizerが問題になっておりプラビックスが効きにくい人がいることがわかっています。アジア人に多いようです。

その為、SAPTにする場合どちらを残すのかと言うのは結論が出ていないと思います。

最近はエフィエントが使用できるようになっております。このCYP2C19酵素の影響を受けないため、プラビックスの代わり(DAPTDual Anti-Platelet Therapyの時)に使われることが多い印象です。

エフィエントでのSAPTSingle Anti-Platelet Therapyの長期データは分からないので調べてみましたが、エフィエントでのSAPTの研究はないようです。

循環器内科5年目

Dr. Miuraの “ポイントレクチャー”

ここではDAPTについて、その目的や使用する抗血小板剤(アスピリンとチエノピリジン)、継続する期間について解説します。

慶應義塾大学病院 循環器内科  三浦 光太郎(Miura Kotaro) 

DAPT (Dual Anti-Platelet Therapy)とは? 

DAPTとは
経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Catheter Intervention: PCI)を行なった後に2剤の抗血小板薬を内服する治療

これはPCI経皮的冠動脈形成術後に起きてしまうステント血栓症のリスクを下げる目的で行われます。

狭窄部位を広げたステント内にステント血栓症が起きてしまうと、いわば急性心筋梗塞に似た状態となり、重篤な転機をたどる可能性が高いためです。

歴史的に1剤からエビデンスが蓄積されてきましたが、抗血小板薬2剤併用でのエビデンスが確立されてきた為、現在はDAPTがstandardとなっています。

2. DAPTの選択肢〜基本はアスピリンとチエノピリジン系、それ以外の選択肢〜

DAPTDual Anti-Platelet Therapyとは基本的にはアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬の2剤を併用することを言います。

現在、日本で使用される用法はアスピリン(バイアスピリン®)に加えてチエノピリジン系に関しては3種類あり、歴史的に古い順に

  • チクロピジン(パナルジン®)
  • クロピドグレル(プラビックス®)
  • プラスグレル(エフィエント®)

となります。

チクロピジンの副作用である血栓性血小板減少性紫斑病、無顆粒球症や肝障害などの副作用1)を少なくしたものがクロピドグレルであり、近年までよく使われていました。

さらに、2014年にはプラスグレルが本邦で発売され、クロピドグレルで受けていたCYP2C19の代謝を受けずに代謝される2)ことで個人間の効果の不安定さを解決し、薬効の立ち上がりも早く最近ではよく導入されるようになってきています。

3. DAPTの治療期間〜12ヶ月以降の判断をどうするか〜

DAPTDual Anti-Platelet Therapyの適正期間は厳密には解決していないのが現状です。一般的にはDES (Drug Eluting Stent)を留置した後、1年間はDAPTDual Anti-Platelet Therapyを継続し、その後は1剤を半永久的に内服することが推奨されています

しかし、長い病変や分岐部病変に対して2本以上のステントを使用した複雑なPCI経皮的冠動脈形成術などのステント血栓症のハイリスク症例では1年間を超えてDAPTを継続することも経験的にあります。

DAPT study3)という研究では長期DAPTDual Anti-Platelet Therapy (12ヶ月群 vs 30ヶ月群)の方がステント血栓症抑制効果が高いと示されました。例えば、そのDAPT studyからDAPTを12ヶ月以上続けた方が良いかどうかの予測スコア(DAPT score)も論文化(図1)されているので、1年後にどうするかを決める参考にしてみても良いかもしれません。

しかし、待機症例のDAPTDual Anti-Platelet Therapy期間は12ヶ月よりも短くて良いのではないかという考えもあり、欧州のガイドラインではより短く設定されています4,5)

(図1)

4. まとめ〜患者さん個人個人で選択することが大切〜

基本的にはPCI経皮的冠動脈形成術後のDAPTDual Anti-Platelet Therapyはガイドラインに従って処方されるべきだと考えられますが、患者さんの出血リスクや虚血リスク、併存疾患などによってテーラーメードで処方期間を調整することが重要と考えられます。

手術の時に中止していいのか、抗凝固薬も併用しなければならない時など迷った際は循環器医師に相談してください。

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5. 参考文献/webサイト等

  1. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構HP 安全対策業務 塩酸チクロピジン製剤による重大な副作用防止について
  2. おくすり110番 プラスグレル塩酸塩
  3. N Engl J Med. 2014 Dec 4;371(23):2155-66.
  4. Circulation. 2012 Apr 24;125(16):2015-26. 
  5. JAMA. 2013 Dec 18;310(23):2510-22. 
  6. JAMA. 2016 Apr 26;315(16):1735-49.
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三浦 光太郎(みうら こうたろう)
    ■■慶應義塾大学医学部循環器内科
    ■■所属学会:日本循環器学会、日本成人先天性心疾患学会、日本心血管インターベンション治療学会等
    ■■循環器の中でも特に成人先天性心疾患のカテーテル治療に興味があります。現在、病院で心房中隔欠損症・動脈管開存症・卵円孔開存等の疾患の治療を研修させていただいております。ホットトピックとして卵円孔開存と奇異性脳梗塞の関連や治療(カテーテル治療)等に興味があります!
 

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