2018/09/22

手指DIP関節痛の鑑別で重要な爪, 皮膚, 罹患関節分布〜変形性関節症, 乾癬性関節炎, 痛風〜

 

この記事を書いている人 - WRITER -
竹之内盛志(たけのうち せいじ)
    帝京大学ちば総合医療センター リウマチ内科/NEWSPICKS 医療・介護系おすすめピッカー
    ■総合内科出身
    ■ 医局人事のない病院で臨床能力を高めたい方、総合内科のサブスペシャリティーとして膠原病を学びたい方、一緒に働きましょう。見学・短期研修も募集しています。united.seijis14あっとまーくgmail.com

高齢者でしばしば経験する手指関節腫脹。
変形性関節症(OsteoArthritis)以外にどのようなことを考えたら良いのでしょうか。

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中からプライマリケア医におすすめの選りすぐりの内容を、ご紹介します!

手指関節腫脹. 本当にOA(変形性関節症)? 



64歳の男性で朝の両手こわばり、指の曲げにくさ、が主訴です。
以前痛みがあった時に他医でプレドニン投与されといたことがありましたが、現在はオフされています。抗CCP抗体は陰性だったそうです。
整形外科ではバネ指とヘバーデン結節と言われているそうです。診断はこれで良いでしょうか?他に考えた方が良いものはありますか?

内科

整形外科的な立ち位置からのコメントになりますが、へバーデン結節(OA変形性関節症)に矛盾しないと思います(写真からはDIP関節遠位指節間関節,PIP関節近位指節間関節が腫れていて、MP関節中手指節間関節はそれほどでもない感じでしょうか)。

バネ指かどうかは曲げにくさより伸ばしにくさ(snapping)とA1プーリーの圧痛で判断しています。バネ指も進行例だとPIP関節近位指節間関節に屈曲拘縮をきたすことが多いので指の曲げにくさやこわばりの原因になるのかなとも思いました(”朝の”こわばりと合うかはわかりませんが)

整形外科

用語解説
※DIP関節: distal interphalangeal joint- 遠位指節間関節(指の第1関節)
※PIP関節: proximal interphalangeal joint- 近位指節間関節(指の第2関節)
※MP関節: metacarpophalangeal joint- 中手指節間関節(指の第3関節)
※CM関節: carpometacarpal joint- 手根中手関節

DIP関節遠位指節間関節の関節炎の鑑別をマニアックなものを入れると、

  • 変形性関節炎(OA)
  • 乾癬性関節炎(PsA)
  • 多中心性細網組織球症
  • primary biliary cirrhosis
  • 痛風

があがります。ほとんどOA変形性関節症、たまに乾癬の場合があります。爪や皮膚に乾癬らしきものがあったり、乾癬の家族歴があったら、リウマチ内科にご紹介ください。

PBCは見たことがありません。痛風の場合はDIP関節遠位指節間関節までくるときは、相当ひどいので、痛風結節だらけかもしれません。たまにリウマチ結節と間違えます。

多中心性細網組織球症は、たまに症例検討会で盛り上がる稀なものですね。関節症状がでたあと、皮膚症状がでてきるので、そこで診断つくかもしれません。

竹之内盛志

Dr. Takenouchiの “ポイントレクチャー”

ここではDIP関節遠位指節間関節の痛みで考える鑑別疾患(変形性手指関節炎(OA)、乾癬性関節炎(PsA)、痛風、多中心性細網組織球症)とその見分け方(皮膚と爪、罹患関節分布とレントゲン)を解説します。

帝京大学ちば総合医療センター 血液リウマチ内科  竹之内盛志(Seiji Takenouchi)

 1. 鑑別診断と考え方

DIP関節: distal interphalangeal joint- 遠位指節間関節(指の第1関節)の痛みの鑑別診断は下記4つです。

  1. 変形性手指関節炎(OA : OsteoArthritis)
  2. 乾癬性関節炎(PsA : Psoraiasis Arthritis)
  3. 痛風
  4. 多中心性細網組織球症

 DIP関節遠位指節間関節が腫れる疾患は、圧倒的に①変形性手指関節炎(OA: OsteoArthritis)が多く、次いで②乾癬性関節炎(PsA: Psoraiasis Arthritis)、そしてかなり稀なケースで、③痛風、④多中心性細網組織球症があります。DIP関節遠位指節間関節には滑膜が少ないため、関節リウマチ(RA)のみでDIP関節を罹患することは基本的にありません。

つまり、DIP関節炎があって、PIP、MCP関節炎がなければRAは否定し、OA変形性関節症PsA乾癬性関節炎を疑います。③、④はかなりマニアックなため、リウマチ非専門医であれば、DIPのみの腫脹はRAではないこと、OA疑いからPsAを抽出することが重要だと思います。ただし、OAの有病率は50歳以降の女性では半数程度といわれており、中年以降のRA女性にOA変形性関節症が合併することはよくあるため、注意が必要です。

2. 変形性手指関節と乾癬性関節炎の鑑別方法

OA変形性関節症PsA乾癬性関節炎の鑑別は、皮膚・爪病変と、罹患分布に着目します。

2.1 皮膚と爪に乾癬をさがす

 病歴で、赤くカサカサした皮膚病変(落屑を伴う紅斑)がないかを聞き、実際に好発部位である被髪頭部、下肢、肘、臍、殿部をみてみましょう。乾癬のなかでもPsAは爪病変がある割合が多く、爪の肥厚、落屑、凹みも確認します。乾癬でも15%程度は関節炎が皮膚症状に先行するため、皮膚に乾癬の病変がなくても、PsAは否定できません。

2.2 罹患関節の分布を確認する

OA変形性関節症PsA乾癬性関節炎は腫れ方や腫れる部位が異なります。

図1 Rheumatology (Oxford). 2015 Jan;54(1):29-38. PMID: 25231177

OA(OsteoArthritis)変形性関節症

 DIP関節、PIP関節以外に、PsA乾癬性関節炎ではこないCMC関節(手根中手関節)に病変を認めることが多い

PsA(Psoriatic Arthritis)乾癬性関節炎

DIP関節遠位指節間関節PIP関節近位指節間関節以外に、OA変形性関節症ではこないMCP、足趾に加え、アキレス腱に病変を認める。分布もしばしば非対称。指または足趾1本丸ごと腫れることがあり、RAY分布と呼ばれます(図2)

図2 Hospitalist(ホスピタリスト) Vol.2 No.2 2014(特集:膠原病) :411-413

2.3 レントゲンもチェック

OA(OsteoArthritis)変形性関節症

関節裂隙の狭小化、関節面の骨硬化に加えて、DIPの関節遠位部、近位部ともに骨新生を認め、骨びらんは認めません。DIP関節遠位指節間関節に加えて、PIP関節近位指節間関節関節や母指CMC関節手根中手関節も罹患しやすいです。

PsA(Psoriatic Arthritis)乾癬性関節炎

PsA乾癬性関節炎は基本的に腱付着部の病態であり、DIP関節の指伸筋腱付着部炎部位の骨新生が特徴的である。付着部炎の炎症が関節内に波及すると、DIP関節の近位部である中節骨遠位に骨びらんが生じます。左右非対称のことが多いのも特徴です。

 3. 痛風

痛風の多くは発作性ですが、数%の患者が持続的な慢性痛風関節炎に移行します。患者の平均罹病期間は10年以上で、四肢末梢の関節を罹患すると、関節リウマチと酷似することがあり、筆者も過去2名、慢性痛風関節炎を関節リウマチと誤診したことがあります。
痛風結節を見つければ、痛風を疑うことは容易であり、好発部位の関節周囲、耳、肘頭滑液包、指腹、腱(特にアキレス腱)を診察すると良いでしょう。RAとの違いは、DIP関節炎が来ることに加え、骨びらんの周囲にエコー、MRI、CTで痛風結節を認めることです。尿酸値はしばしば正常であるため、尿酸値正常で痛風を除外してはいけません。

 4. 多中心性細網組織球症

写真 Best Practice & Research Clinical Rheumatology 26 (2012) 543–557   PMID: 23040366

慢性多関節炎が生じ、その後に特徴的な赤褐色の丘疹・結節が鼻や耳などの頭部、頸部、手指などに生じる極めて稀な疾患であり、知らないと診断できない病気の一つです。組織学的に組織球と好酸性のグランドグラス状細胞質を有する多核巨細胞の浸潤を特徴とします。

関節症状から皮膚症状がでるまでは平均3年の差があるため、関節炎のみの時期は診断は困難です。関節炎は破壊性が強く、左右対称性の多関節を侵します。DIP関節遠位指節間関節が好発部位で、75%の患者にDIP関節炎を認めます。DIP関節以外にも、膝、肩、手、股、足、肘、足趾は好発部位で、破壊性がかなり強く、関節・皮膚以外にも心臓、肺、肝臓、腎臓、甲状腺、骨髄、筋にも病変が生じます。

記事で疑問は解決できたでしょうか?

AntaaQAは医師専用のオンライン相談アプリです。
現場で患者さんの診断治療に困った場合は、AntaaQAで他の医師に相談してみませんか。

みんなで一緒に患者さんの診断治療に取り組みましょう。

また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

 5. 引用文献

  1. Rheumatology (Oxford). 2015 Jan;54(1):29-38. PMID: 25231177
  2. Hospitalist(ホスピタリスト) Vol.2 No.2 2014(特集:膠原病) :411-413
  3. Best Practice & Research Clinical Rheumatology 26 (2012) 543–557   PMID: 23040366
この記事を書いている人 - WRITER -
竹之内盛志(たけのうち せいじ)
    帝京大学ちば総合医療センター リウマチ内科/NEWSPICKS 医療・介護系おすすめピッカー
    ■総合内科出身
    ■ 医局人事のない病院で臨床能力を高めたい方、総合内科のサブスペシャリティーとして膠原病を学びたい方、一緒に働きましょう。見学・短期研修も募集しています。united.seijis14あっとまーくgmail.com
 

Copyright© Antaa , 2018 All Rights Reserved.