2018/09/22

急性期血糖コントロールとインスリン持続静注〜ガイドラインの目標と注意点(低血糖と低カリウム血症)〜

 

この記事を書いている人 - WRITER -
石澤嶺(いしざわ りょう)
    東京医療センター救急科 チーフレジデント
    同院初期研修の後、そのまま救命センターで後期研修を開始し救急外来および救命センターでの集中治療に従事。趣味は研修医教育。その一環として,「救急医 ざわさん」名義でTwitterやブログで情報発信を行っている。
twitter ブログ

入院した患者の血糖コントロールをするにあたり、持続静注で行う場合はどのような場合でしょうか

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中からプライマリケア医におすすめの内容を、ご紹介します!

急性期血糖コントロールとインスリン持続静注〜ガイドラインの目標と注意点(低血糖と低カリウム血症)〜 

入院患者の血糖コントロールについてです。 既往に糖尿病のある外傷性くも膜下出血の急性期の患者さんを診ています。 

固定打ち(超速効2-6-2-0、遅効型0-0-0-20)で対応していますが、来院時から血糖値250〜350mg/dl程度でコントロールに難渋しています。 

こういった場合どのように対応していますでしょうか。

初期研修医2年目

今は急性期で血糖が非常に不安定なんでしょうね。 グリセオールや経管栄養なども高血糖の原因になります。 

インスリン持続静注でコントロールをするのが無難な印象ですが、固定打ちではあれば、インスリン量をあげて行った方がいいです。 糖毒性が取れて来たら、もっと少ない量でも調節できるようになると思います。 

可能であれば、糖入りの点滴にはヒューマリンRを7gに対して1単位程度で混注するのと、4時間ごとのスケールをかけた方がよさそうですが、看護師さんとの仕事でもあるので相談にはなるかと思います。

救急5年目

僕も、固定打ちであればインスリン量を増やせる印象ですが、コントロールに難渋しているようなので一度持続静注にして全身状態見ながら適宜固定打ちに戻していけばいいのかなと思います。 

血糖値は術後でなければ、110-150mg/dlくらいでコントロールしていますが、術後であれば180mg/dl程度までは許容しています。

産婦人科3年目

インスリン持続静注で注意することとして、ヘパリンなど他のラインの側管につながっていて血糖が全然下がってなかったということもあるので気をつけてください 

グリセオールなどが終了したり減って来ると、急に血糖コントロールがつくこともあるので、モニタリングは1-2時間おきが良いと思いますインスリン持続静注を行っている間はモニタリングが必要

糖尿病科3年目

救急医の立場からコメントしておきます. 以下の原則に則り行います. 

  1. スライディングスケールは使わない
  2. 栄養はなるべく生理的に
  3. 血糖値は緩めのコントロール

なので, まずは患者の状態によりますが可能な限り経口摂取をトライします. それがダメなら経管栄養の間欠投与, それでもダメなら持続投与です. 持続投与している場合にはインスリンも持続です. 

細かな投与量は決めていませんが, ブドウ糖10gに対して1単位のインスリン量ではまず低血糖になることはないためそれ以上の量から開始します. 急性期は予想通りに進むとは限らないので心配なときには小まめな管理をするしかないと思います. 

ちなみに、インスリンスライディングスケールをまったく使ってはいけないという意味ではありません. 

異常な高血糖は避けるべきなのである程度は使用してもいいですが, いつまでも使用する, ルーチンで指示を出すのはやめるべきということです. 

状態が安定している(感染症などの急性期の病態がない)場合には食事スケールなど細かな調整を行うこともありますが急性期には不要と考えます.

救急11年目

Dr. Ishizawaの “ポイントレクチャー”

集中治療室や、救命センターなど重症患者さんを管理する際に血糖のコントロールは非常に重要です。新規入院患者を診る全ての医師が知っておくべき血糖コントロールのうち、持続静注にフォーカスして解説します。

独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 救急科 石澤 嶺(Ishizawa Ryo) 

 

1. 定期打ちでコントロール不良であれば、持続静注を考慮

 施設毎にプロトコールがあればそれに従うのが安全です。メインの輸液への混注、もしくはシリンジポンプを使用してインスリンの持続静注を行うことを考慮します。 

急性期は血糖の変動が激しいので、インスリンの定時打ちは思わぬ低血糖を招くこともあり慎重に行う必要があります。 

処方例:輸液へのブドウ糖の混注
輸液のブドウ糖5g~10gあたりに即効型インスリンを1単位混注 
処方例:インスリンの持続静注

即効型インスリン50単位+生理食塩水でトータル50㎖(1単位/㎖の希釈液を作成。) 

看護師さんへ下記のような指示を出します。 

◆血糖は2時間おきに測定
◆2㎖/hrから投与開始
◆血糖値(mg/㎗)とインスリン投与量 

  • 69以下…インスリン中止、50%ブドウ糖を20ml ivしDrcall 
  • 70-109…インスリン中止しDr call 
  • 110-139…0.5単位/時間減らす 
  • 140-199…そのまま 
  • 200-249…0.2単位/時間増やす 
  • 250-299…0.4単位/時間増やす 
  • 300-349…0.6単位/時間増やす 
  • 350-399…0.8単位/時間増やす 
  • 400以上…1.0単位/時間増やしDrcall 

◆血糖値が109mg/dl以下及び350mg/dl以上の時は上記処置後1時間で血糖値を再検し、再度注入量を調節する。 

※血糖の下がり方には個人差が大きいので、実際には微調整が必要です。インスリンの持続静注を行う場合には経験が多い医師に指示を仰ぎましょう。

※インスリン持続静注を開始するとインスリンの作用によりカリウムが低下する場合があります。4-6時間おきにカリウム値はチェックし、低カリウム血症にならないように注意しましょう。 

2. 血糖コントロールのエビデンス

高血糖が感染防御能の低下や創傷治癒を遅らせる可能性があることは1990年代から指摘されていました。

2001年のNew England Journal of medicine(以下NEJM)で発表されたLeuven Ⅰ trialでは、外科系ICU患者1548名において血糖を80~110㎎/dlに管理するIntensive Insulin Therapy(以下IIT)を行うと、血糖を180~200㎎/dlに管理する群に比較してICU死亡率を下げる可能性が示唆されました。1) 

しかし、その後はIITを行うことで死亡率を改善するエビデンスは示されることはなく、2009年のNEJMに発表されたNICE  SUGAR trialで、IITはむしろICU患者では低血糖を増やし、90日死亡率を増加させることが示されています。2) 

その後複数のメタアナリシスの結果3,4,5)もあり、血糖コントロールの重要性は認識されつつもIITは行われなくなりました。日本版敗血症診療ガイドラインなどにも記載がありますが、現在の血糖コントロールの目標は144~180㎎/dlとされています。 

3. まとめ

簡潔に重症患者さんの血糖コントロールについてまとめました。

血糖コントロールが不良な場合には合併症に注意しつつ、インスリンの持続静注を導入しましょう。その際には頻回の血糖チェックとカリウムのチェックは忘れずに行いましょう。 

記事で疑問は解決できたでしょうか?

AntaaQAは医師専用のオンライン相談アプリです。
現場で患者さんの診断治療に困った場合は、AntaaQAで他の医師に相談してみませんか。

みんなで一緒に患者さんの診断治療に取り組みましょう。

また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

4. 参考文献/推薦図書/参考webサイト

  1. N Engl J Med. 2001 Nov 8;345(19):1359-67.
  2. N Engl J Med. 2009 Mar 26;360(13):1283-97. 
  3. JAMA. 2008 Aug 27;300(8):933-44.   
  4. CMAJ. 2009 Apr 14;180(8):821-7. 
  5. Chest. 2010 Mar;137(3):544-51.

<推薦図書> 

<参考webサイト> 

この記事を書いている人 - WRITER -
石澤嶺(いしざわ りょう)
    東京医療センター救急科 チーフレジデント
    同院初期研修の後、そのまま救命センターで後期研修を開始し救急外来および救命センターでの集中治療に従事。趣味は研修医教育。その一環として,「救急医 ざわさん」名義でTwitterやブログで情報発信を行っている。
twitter ブログ
 

Copyright© Antaa , 2018 All Rights Reserved.