2018/09/22

間質性肺炎で提出するバイオマーカー(KL-6, SP-A, SP-D)と特殊検査項目

 

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藤本和志(ふじもと かずゆき)
    独立行政法人東京医療センター呼吸器科/日本呼吸器学会 専門医
    東京医療センターで呼吸サポートチーム(RST)を立ち上げ、人工呼吸器ケアなどに積極的に関わり、セミナーなどを開催。現在は、東京医療センターに従事しながら、呼吸器疾患を中心とした在宅診療にも関わり、また介護施設や保育園を運営。医師として“地域コミュニティ×医療”を模索しながら奮闘しています。

間質性肺炎を疑った時に出す血液検査にKL-6,SP-A,SP-Dなどがありますが、どう考え、どう使い分ければよいのでしょうか。 

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中から研修医におすすめの選りすぐりの内容を、ご紹介します!

 間質性肺炎疑い. 検査で出すバイオマーカは?  

間質性肺炎の血液マーカーについての質問です。 

初期的な質問なのですが、 KL-6,SP-A,SP-Dの違いが知りたいです。
そして、実際の使い分けってどうされていますか?

皮膚科

個人的には、スクリーニングでは、KL-6をとることが多いですが、間質性肺炎で外来で経過を見て行く際には、SP-Dを併用しています。 

中でもKL-6が、間質性肺炎において最も感度(94%)、特異度(96%)が高いです。上がり方は急性増悪後10日目にピークに達したと報告されています。すりガラス陰影や線維化病巣と相関するので画像との関連も考えますね。

藤本 和志

KL-6とSP-D/Aは、外来セッティングでは月にひとつしか算定できないのでほとんどKL-6しか出す場面はないかも知れません。なお、KL-6は間質性肺疾患以外でも、たとえば肺癌や転移性肺腫瘍でも上昇するので、上がってきた時の解釈はすこし注意が必要です。PCPでもけっこう急激に上がるのを経験します。

呼吸器内科

KL-6は卵巣漿液性癌でも上がることがありますので肺は綺麗なのに何でだろうと思いましたら下腹部もCTでチェックしてみて下さい。

産婦人科

Dr. Fujimotoの “ポイントレクチャー”

何となく胸部単純X線写真が汚い(間質影が出現している)けど、何をしたらいいかわからない。ここでは間質性肺炎のバイオマーカーにフォーカスし解説します。 

東京医療センター 呼吸器科  藤本 和志(Fujimoto Kazuyuki)

1. 間質影を見た際、提出すべきバイオマーカー

呼吸器科医は、どのような間質性肺炎のバイオマーカーを提出しているのでしょうか?まず、間質性肺炎を否定できないようなケースでは、有名なKL-6くらいは最低限提出しておく、ということはコンセンサスとなっているようです。
一方で、間質性肺炎のバイオマーカーとして提出されるものは、KL-6のみではありません。有名なものとしてSP-A、SP-Dなどのサーファクタント特異的蛋白があげられます。これらはそれぞれ感度、特異度が示されています(表1)。また、間質性肺炎急性増悪の際には、LDHの上昇を伴っていることも多く、疑う場合には必ず提出しましょう。   

表1 

 

感度 

特異度 

KL-6(基準値:465 U/ml) 

93.3 % 

96.3 % 

SP-A(基準値:48.2 ng/ml) 

81.8 % 

86.6 % 

SP-D(基準値:116 ng/ml) 

69.7 % 

95.1 % 

注釈:本データの基準値は参考文献内のものであり、日常診療での基準値とは異なる。 

参考文献:Am J Redpir Crit Care Med. 2002 Feb 1; 165(3):378-381  *1

 2. 間質性肺炎のマーカーを提出するタイミング

呼吸器科医がこの間質性肺炎マーカーを通常診療にどのように用いているかを考えてみましょう。まずは、病棟や外来の患者さんが肺炎症状を呈している際、

  • 間質性肺炎を含めた他疾患との鑑別が必要とされる時
  • 外来などで経過を見ている時に病勢を把握したい時
  • 治療を加えている場合の反応性を見る時

が代表例としてあげられます。 

2.1 KL-6 

KL-6の歴史を少し紐解いてみましょう。広島大学の河野先修興先生が肺癌関連抗原を探すなかで、間質性肺炎患者に高く検出されるモノクローナル抗体を発見し、これをKL-6と名付けました。日本で有名なこのKL-6は、海外でも用いられるようになってきていますが、やはり日本で一番検査されているようです。 

2.2 KL-6値の判定 

KL-6のカットオフ値は500 U/mL程度と設定されていますが、実臨床では、例えこれが550U/mLなどのように少し高値であっても有意とは捉えないことが多いです。700U/mL や 800U/mL 程度の数値であれば,少しあがっているなぁ,という印象を持ち, さすがに4ケタにもなっていれば間違いなくあがっている、と考えます。 

間質性肺炎の疾患でも、細菌性肺炎、薬剤性肺障害、ARDSなどの症例でも、KL-6の上昇を経験することは多く、非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌などでも上昇する場合があるので、癌を合併した間質性肺炎のKL−6の解釈においては注意を要します(広島大学医学雑誌, 33(6), 971-997, 1985 *2)。
また、これらの疾患においては、SP-A(基準値43.8 ng/mL)、SP-D(基準値110 ng/mL)も同様に上昇することがあります。 

2.3 KL-6とSP-A、SP-Dの使い分けは 

感度・特異度の観点から、KL-6がバイオマーカーの基本ですが、SP-A、SP-Dを同時に提出する場合もあります。しかし、SP-AやSP-Dだけを提出して、KL-6を提出していないことは少ないと思われます。 

特徴としては、KL-6より早期にSP-A、SP-Dが上昇することが多いとされています(日呼吸会誌 2001;39(4):p298-302 *3)。例えば、間質性肺炎急性増悪などの急性疾患において、早期にはKL-6が上昇していないケースもあり、SP-A、SP-Dの提出が有効となりえます。また、経過観察のためにKL-6をフォローする場合も、SP-A、SP-Dを同時に提出しておくことで、予後予測に寄与したり、今後病態が変化した際の参考値となったりすることもあります。 

2.4 補足:間質性肺炎を疑った場合に提出すべき特殊な採血項目 

間質性肺炎の原因として、膠原病などの除外は必須となっています。関節リウマチやシェーグレン症候群、皮膚筋炎など多数に及ぶ膠原病疾患を皮膚所見などの身体所見や、採血項目などから除外することは重要と思われます。私が提出している項目の一例を呈示します。 

RF、抗核抗体、dsDNA、RNP、SS-A、SS-B、Scl-70、抗ARS抗体、PR3-ANCA、MPO-ANCA、セントロメア抗体 

ただし、すべてを同時に提出しているわけではないことも多く、患者背景や診察所見から優先度を決めています。 

3. さらに学びたい人のために

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4. 参考文献

  1. Am J Respir Crit Care Med. 2002 Feb 1; 165(3):378-381
  2. 広島大学医学雑誌, 33(6), 971-997, 1985
  3. 日呼吸会誌 2001;39(4):p298-302
この記事を書いている人 - WRITER -
藤本和志(ふじもと かずゆき)
    独立行政法人東京医療センター呼吸器科/日本呼吸器学会 専門医
    東京医療センターで呼吸サポートチーム(RST)を立ち上げ、人工呼吸器ケアなどに積極的に関わり、セミナーなどを開催。現在は、東京医療センターに従事しながら、呼吸器疾患を中心とした在宅診療にも関わり、また介護施設や保育園を運営。医師として“地域コミュニティ×医療”を模索しながら奮闘しています。
 

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