2018/12/26

3つの具体例で見る!介護保険主治医意見書の書き方〜『特記すべき事項』の記載例と考え方〜

 

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近藤敬太(こんどうけいた)
    ○藤田医科大学 総合診療プログラム/豊田地域医療センター 総合診療科
    ○医療法人豊和会老人保健施設かずえの郷・さなげ
    ○トヨタ記念病院にて初期研修修了後、藤田医科大学総合診療プログラム後期研修中。後期研修を行いながら、老人保健施設の運営にも携わっております。
    ○当プログラムは日本最大規模の大学病院と在宅支援病院がタッグを組み、教育内容が非常に充実しております。毎年後期研修医が多く入局しており、2018年度は日本一の新規専攻医数(9名)となり、非常に盛り上がっております。興味のある方は是非1度見学にお越し下さい。
    *見学申し込みは こちらのメール まで
    *勉強会情報を配信しております!当科の Facebookページ LINEグループ はこちらまで!

介護保険主治医意見書って書いたことありますか?「どうして書かないといけないんだ!?」「書き方が分からない…」なんて感じたことはありませんか?

はじめまして、愛知県にある豊田地域医療センター総合診療科の近藤敬太と申します。老人保健施設の運営や介護認定審査会委員もしています。

介護保険主治医意見書の記載、正直大変ですよね…僕も最初はそうでした。

しかし、主治医意見書を書くだけでなく実際に利用する立場になって、「こういうことだったのか!」「こう書けば良かったんだ!」と驚くことが多く、その意義を理解したことで、短時間かつ分かりやすい形で書けるようになりました!

ここでは主治医意見書を初めて書く医師でも分かりやすく「介護保険主治医意見書ってそもそもなんなのか」「介護保険主事意見書の書き方」「書き方のポイント」について具体例をお示ししながら解説します。

また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。制度改正などで追加修正が必要な内容があれば、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

3つの具体例で見る!介護保険主治医意見書の書き方〜『特記すべき事項』の記載例と考え方〜

藤田医科大学 総合診療プログラム
豊田地域医療センター 総合診療科
老人保健施設かずえの郷・さなげ 近藤 敬太

1.介護保険主治医意見書とは

 主治医意見書が利用される場面はズバリ

   ①介護認定審査会
   ②ケアプラン作成

の2つです。主治医意見書とは何かを考えるにあたって、読み手が誰なのかを考えると理解がしやすくなります。

①介護認定審査会

 介護認定審査会は、簡単に言えば要介護認定の最終決定を行う会議です。介護保険申請時、その申請者に主治医がいる場合「介護を必要とするようになった障害の原因である病気や負傷の状態について」主治医から意見を求めることになっています。

「主治医意見書を書く」と言うとこちらがイメージされやすいのではないでしょうか。実際にはどういった内容が見られているか、表1をご覧ください。

<表1  介護認定審査会において介護主治医意見書を確認するポイント>

確認項目

みられるポイント

特定疾病に該当するかどうかの確認(第2号被保険者のみ)

申請者が40歳以上65歳未満(第2号被保険者)の場合、生活機能低下の直接の原因となっている疾病が特定疾病(表2)に該当することが認定の条件となっており、その診断根拠の記載もみられます。

介護の手間についての確認

 

介護認定審査会では「介護の手間=介護がどのような理由で大変か」を評価し、審査が行われるので、介護の手間の程度や具体的な状況もみられます。

認知症の有無の判断、状態の維持や状態安定・不安定の確認

 

「要支援2」と「要介護1」を分ける時にみられます。

・認知症=日常生活自立度がⅡ以上かM
・心身の状態が不安定=6ヶ月以内に心身の状態が悪化する可能性がある

のうち、どちらかに該当すれば要介護1と認定されます。(図1参照)

 

<表2 特定疾病 介護保険法施行令第二条を参考に作成>

  1. がん【がん末期】(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症※
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの

 

<図1 要支援2・要介護1の振り分け方 要介護認定 介護認定審査会委員テキスト2009より引用)

介護認定審査会において特に重視されているのは「第二号被保険者の場合は特定疾病かどうか」「介護の手間について」「認知症の有無」「状態の安定・不安定」といったポイントで、これらについてはしっかりと記載しておく必要があります。

特に、要支援2と要介護1は同じ程度の介護の手間と判断されます。その中で図1にあるように、「認知症の有無」「状態の安定・不安定」を判断し、要支援2と要介護1に振り分けていきます。要支援2と要介護1では受けられるサービスが大きく異なるため、このポイントを押さえて記載をする事が非常に重要です。

②介護サービス計画(ケアプラン)作成

 介護認定後、主治医意見書の情報を元にして、介護支援相談員(ケアマネージャー)がケアプランを作成し、医学的観点からの意見や留意点等に関する情報をサービス提供者に伝えます。つまり、ケアプランを作成する際に有用となるサービスや福祉用具、留意点などを具体的に記入する必要があります。
具体例は” 3.『特記すべき事項』を記入する時のポイントと考え方 “で後述します。

2.共通の様式と3つの具体例でみる基本的な記載方法

以下に3つの具体例を提示します。それぞれの症例にどのようなポイントがあるか確認してみて下さい。

  ①第1号被保険者 認知症のある患者
  ②第1号被保険者 認知症のない患者
  ③第2号被保険者 末期癌患者

①第1号被保険者 認知症のある患者

<図2 介護保険主治医意見書記入例:第1号被保険者 認知症のある患者>

1号被保険者、アルツハイマー型認知症の患者です。医学的な専門用語を避けながらこれまでの認知症の経過についてを「疾病に関する意見(1—(3))」で書きます。また、HDS-Rの点数、どのような手間がかかるか、日常生活の注意点、必要と考えられるサービスについてを「特記すべき事項(5)」で書きます。

②第1号被保険者 認知症のある患者

<図2 介護保険主治医意見書記入例:第1号被保険者 認知症のない患者>

第1号被保険者、2型糖尿病の患者です。糖尿病性神経障害が身体機能低下の主な原因であり、特に投薬ではインスリンの管理に注意が必要ということを、「疾病に関する意見(1−(3))」で書きます。また、高齢独居という背景、下肢筋力低下により必要と考えられるサービスについてを「特記すべき事項(5)」で書きます。

③第2号被保険者 末期癌患者

<図3 介護保険主治医意見書記入例:第2号被保険者 末期癌患者 >

第2号被保険者、がん末期の患者です。今までの症例と違い40歳以上、65歳未満の第2号被保険者のため、症状の不安定性の具体的な説明、特定疾病の診断過程についてを「疾病に関する意見(1)」で書きます。また、悪性腫瘍末期であり、ADL低下が予想されることや、必要な福祉器具、サービスについてを「特記すべき事項(5)」で書きます。

3.『特記すべき事項』を記入する時のポイントと考え方

 特に難しいと感じられるのは『特記すべき事項』の書き方ではないでしょうか。『特記すべき事項』の充実は「要支援2と要介護1」の判定や「非該当」の判定において重要です。さらに、介護判定後のケアプラン作成の鍵ともなります。

 「介護の手間」について「身体機能」「認知機能」の観点から記載することを意識して下さい。もちろん、必ずしも医師が全ての情報を収集する必要は無く、多職種や患者本人とその家族で情報を収集・共有するという考え方が重要となります。一般的に収集する情報は(表3)(表4)にまとめて最後に記載しています。

 これらのポイントから読み手が「介護の手間」を想像できるように具体的に記載することが重要です。また、読み手は介護認定審査員(健康・医療・福祉の学識経験者)と介護支援専門員(ケアマネージャー)であり、必ずしも医師ではないため、専門用語ばかりではなく介護認定審査員、介護支援専門員(ケアマネジャー)を意識した書き方が必要となります。具体的な例文と解説は以下の通りです。

○身体機能について

(1)疾患や症状に伴う介護の手間に関すること

例文

パーキンソン病による下肢の筋力低下に伴い、椅子からの立ち上がりやトイレ動作が不安定になってきている。廃用症候群の予防のため離床が欠かせないが、家族がつきっきりとなるため負担が大きい。

 →疾患や症状によりどのように介護の手間がかかっているかを読み手が具体的に想像できる。

(2)直接的な介助・ケアやサービス利用に関すること

例文

症状の進行に応じて、毎週3回、訪問リハビリを利用しているが、本人のリハビリの意欲に濃淡があり、入浴やトイレ移動などで全介助を要する場合がある。転倒による廃用症候群の予防のため、短期集中的なリハビリの提供の確保が望まれる。

 →実際にどのようなサービスが必要となるかを読み手が具体的に想像できる。

○認知機能について

(1)日常生活中にみられる介護の手間に関すること

例文

認知機能の低下のため、全く意思疎通ができない着替えをしても順番が不適切なことが多い。高額の羽毛布団を契約するなどの経済被害にあっている。

 →認知機能低下により日常生活においてどのように介護の手間がかかっているかを読み手が具体的に想像できる。

(2)症状の進行に関すること

例文

2年前の初診時にHDS-Rが6点であったが、現在は実施困難である。尿失禁の頻度が増加し、夜間はオムツを使用するようになった。1人で外出できなくなっている

 →認知機能低下の症状がどのように進行しているかを読み手が具体的に想像できる。

(3)直接的な介助・ケアやサービス利用に関すること

① 家族介護の状況(負担感)

例文

服薬は家族が管理している。更衣は独力では困難であるが、適切な衣服を順番に手渡せば自分で着ることができる。主介護者である長男の嫁がもの盗られ妄想の対象となっており、その対応に疲弊している。

 →介護負担が増えている原因について読み手が具体的に想像できる。

② 利用している・必要となる介護サービス・サービス利用の注意点

例文

現在、デイサービスを週2回利用している。介護保険サービスの利用に関しても抵抗が予想され、こまめな調整が必要と思われる。独居のため、服薬管理や経済被害に対する見守りが必要である。

 →家族、本人にとっていつ・どのようなサービスが・なんで必要となるかを読み手が具体的に想像できる。

<表3  特記すべき事項欄の充実のために必要な項目一覧  主治医意見書記載ガイドブックを参考に作成)>

身体に関する項目

身長・体重(BMI)の変化

四肢(利き腕や欠損)

麻痺・拘縮(有無と部位)

生活に関する項目

屋内・屋外の移動(手段や距離)

食事・排泄・入浴の動作(回数・程度)

日中離床・睡眠(時間や薬)

行動に関す流項目

外出(頻度や意欲)

認知機能(記憶や見当識)

認知症の影響(介護への抵抗や火の扱い)

 

<表4 特記すべき事項欄充実のための基本チェックリスト 主治医意見書記載ガイドブックを参考に作成>

  1. バスや電車で一人で外出していますか
  2. 日用品の買い物をしていますか
  3. 預貯金の出し入れをしていますか
  4. 友人の家を訪ねていますか
  5. 家族や友人の相談にのっていますか
  6. 階段を手すりや壁を伝わらずに昇っていますか 
  7. 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか
  8. 15分位続けて歩いていますか
  9. この1年間に転んだことがありますか
  10. 転倒に対する不安は大きいですか
  11. 6ヶ月間で2-3kg以上の体重減少がありましたか
  12. 身長   cm、体重   kg(BMI=    )
  13. 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか
  14. お茶や汁物等でむせることがありますか
  15. 口の渇きが気になりますか
  16. 週に1回以上は外出していますか
  17. 昨年と比べて外出の回数が減っていますか
  18. 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか
  19. 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
  20. 今日が何月何日かわからない時がありますか
  21. (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
  22. (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
  23. (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる
  24. (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない
  25. (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする

 

4.最後に

 主治医意見書を書くことは、最初は誰しも「面倒くさい」「嫌だなぁ」と感じることかと思います。しかし、主治医意見書に書くべきポイントは患者さんの生活環境や周囲の状況を把握する上で非常に重要であり、多職種連携や患者さんへのより良い医療の提供にも繋がります。主治医意見書を書く時だけではなく、是非、定期の外来からこれらのポイントを意識して診療をしてみて下さい!

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5. 参考文献

  1. 要介護認定における主治医意見書の実態把握と地域差の要因分析に関する調査研究事業 報告書 平成28年3月 厚生労働省
  2. 介護認定審査会委員テキスト 2009 厚生労働省
  3. 認定調査員テキスト 2009 厚生労働省
  4. 厚生労働白書 第1部 人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える 第3章 高齢期を支える医療・介護制度 厚生労働省
  5. 公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成27年度 厚生労働省 老健局 総務課
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    ○藤田医科大学 総合診療プログラム/豊田地域医療センター 総合診療科
    ○医療法人豊和会老人保健施設かずえの郷・さなげ
    ○トヨタ記念病院にて初期研修修了後、藤田医科大学総合診療プログラム後期研修中。後期研修を行いながら、老人保健施設の運営にも携わっております。
    ○当プログラムは日本最大規模の大学病院と在宅支援病院がタッグを組み、教育内容が非常に充実しております。毎年後期研修医が多く入局しており、2018年度は日本一の新規専攻医数(9名)となり、非常に盛り上がっております。興味のある方は是非1度見学にお越し下さい。
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