2018/09/22

FDG-PET検査〜SUVmax, 生理的集積部位と良悪性の考え方〜

 

この記事を書いている人 - WRITER -
和田 武(わだ たけし)
    ■放射線科専門医
    ■がん研有明病院画像診断部医員/聖路加国際病院放射線科非常勤医/千葉大学大学院医学研究院 画像診断・放射線腫瘍学大学院生/アンター株式会社医師統括部
    ■2016年度聖路加国際病院放射線科チーフレジデント
    ■第101回北米放射線学会 Cum Laude 受賞
    ■画像診断.com
    ■臨床(画像診断・IVR),研究,執筆,ホームページ運営,医師のコミュニティ形成などの活動を行っています.画像診断に関することなら何でも,ご相談ください.

FDG-PET 検査で評価するSUVmax の値。腫瘍の良悪性の判断はできるのでしょうか。

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中からプライマリケア医におすすめの選りすぐりの内容を、ご紹介します!

PET検査のSUVmax. 良悪性の判断は? 

FDG-PET 検査の SUVmax について質問です。

悪性腫瘍では高値を示すと理解していますが,良性と悪性を区別する明確なカットオフ値は存在するのでしょうか?明確なカットオフ値がない場合には,経験的な値を教えて下さい.

皮膚科

臓器ごとにおいてある程度指標とされる値はありますが,全臓器において明確に良悪性を鑑別するカットオフ値はありません.臓器によって正常とされる FDG の集積程度は異なりますし,一口に悪性腫瘍と言っても様々な組織型があり,組織型によって FDG の集積程度は全く変わるためです.

PET 検査での FDG 集積亢進は組織における代謝と相関しています。

腫瘍は正常な細胞よりも代謝が亢進していることが多いので、一般的に高集積を示す事が多いです.
ただし、マクロファージなどの炎症細胞にも同様に集積が亢進するので、炎症と腫瘍は常に鑑別になります(鑑別①: 炎症 VS 腫瘍).

また、良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別もよく問題となります.一般的には良性腫瘍よりも悪性腫瘍の方が高集積を示しますが,例外もあります(鑑別②: 良性腫瘍 VS 悪性腫瘍).
良性腫瘍の中にもとても集積が強い腫瘍(唾液腺のワルチン腫瘍など)がある一方で,悪性腫瘍の中でも集積が低い腫瘍(中分化肝細胞癌や腎癌、非浸潤肺腺癌など)が存在します.

上記のような理由から SUVmax の数値単独で鑑別することは難しく,その他の画像所見や経過,腫瘍マーカーなどと合わせて総合的に判断する必要があります。

和田 武

Dr. Wadaの “ポイントレクチャー”

ここではSUVmaxはFDGの体内分布を定量化するための指標の代表値であることと、FDGの生理的修正部位と良悪性判断の考え方について解説します。

がん研有明病院 画像診断部 和田 武

 1. ポイントは3つ

  • 得られた画像や SUVmax の値が適切か確認する
  • 生理的な集積ではなく異常集積であることを確認する
  • 炎症や良性腫瘍ではないことを確認する

 2. SUVmax はFDGの体内分布を定量化するための指標の代表値

 PET検査で腫瘍を検出するために用いる製剤としては18F-FDG (以下、FDG)が最も一般的です。FDGはグルコースによく似た物質で、細胞内に取り込まれヘキソキナーゼによってFDG-6リン酸に代謝されますが、グルコースとは異なり解糖系には利用されないため、大半が細胞内に留まります (図1)。

図1: FDGはグルコースと異なり細胞内に残存し(metabolic trapping)、相対的に糖代謝の亢進した腫瘍細胞では細胞内に多くのFDGが残存する。

 腫瘍細胞は通常より代謝が亢進しているので、正常な組織と比べると細胞内の FDG蓄積量が多くなります。このため腫瘍は FDG 高集積部位として検出することができるうえ、集積の程度をみて腫瘍の増殖速度や悪性度、腫瘍細胞数(細胞密度)を推測することもできます。

 PET 検査におけるFDGの体内分布を定量化するために用いる指標が SUV (standardized uptake value) であり、この値が大きければ FDG の集積が相対的に強いということになります。体重や体脂肪率により個人差があるため絶対的な値ではありませんが、最もよく使われる指標であり、通常は標的部の最大SUV値であるSUVmax を代表値として用います。

 3. FDGの生理的集積部位と良悪性の考え方

 さて、実際に PET における FDG 集積の程度を用いて病変が悪性かどうか考えたいと思います。まずは得られた PET画像やSUVmax の値が適切かどうか判断する必要があります。

 FDG集積ならびにSUVmax の値に影響を与える因子としては被験者や撮影機器、画像処理の影響などが考えられます。この中で被験者の要因によるものとしては、血糖値や運動の影響が最も重要であり、一般的に高血糖では腫瘍へのFDG集積が低下し、正常血糖値で撮影した場合よりも病変を検出しにくくなります。また、直前に運動をしていた場合には筋肉に集積を生じ、腫瘍と間違える場合があります。

 さらに体内には様々な  FDG 生理的集積部位(表1)があり、これらを異常集積と誤認しないことが重要です。また、上述のように腫瘍では相対的糖代謝亢進が生じているために FDG 高集積部位として検出されますが、これは腫瘍に特異的な現象ではなく、好中球や活性化マクロファージなどの活動性の高い炎症細胞にも生じることが知られています。つまり炎症細胞浸潤が生じる全ての疾患は腫瘍との鑑別が必要となります。さらには良性腫瘍の中にも高度の FDG 集積を生じるものがあり、これらは常に悪性腫瘍との鑑別が必要となります。

表1: 生理的集積部位一覧

強度集積
唾液腺 軽度〜中等度集積
甲状腺 軽度〜中等度集積
縦隔・大血管 軽度〜中等度集積
心臓 軽度〜強度集積;絶食状態などによって異なる
乳房 軽度集積、授乳中は強度集積
軽度〜中等度集積
中等度集積
腸管 軽度〜強度集積
腎・膀胱 強度集積
子宮 軽度集積、月経中は強度集積
睾丸 中等度集積
筋肉 軽度、緊張が強い場合や運動後などは中等度〜強度集積

※山口 慶一郎・他:正常画像と生理的変動. 画像診断 23 : 1129-1141, 2003を参考に作成

 4. まとめ

  1. 得られた画像や SUVmax の値が適切か確認する
  2. 生理的な集積ではなく異常集積であることを確認する
  3. 炎症や良性腫瘍ではないことを確認する

 という順序で鑑別を進めていくことになります。一般的には悪性度が高いほど、細胞増殖能が高いほど、細胞密度が高いほどFDGの集積は強くなる傾向があるため、悪性腫瘍にもかかわらず集積が弱い腫瘍(表2)や良性腫瘍・炎症性病変なのに集積が強い疾患(表3)を例外として意識することが重要です。

 もちろん、文献的な良悪性の cut off 値は各臓器や腫瘍によって多くの報告がなされていますが、実際にはSUVmaxの値のみで判断するのではなく、経過や CT 上の形態、集積の形態などを総合して診断することになり、この意味で PET/CT は総合画像診断であると言えます。

 生理的集積との区別や異常集積の拾い上げ、集積の解釈など読影は慣れるまでは大変ですが、形態画像のみならず機能を反映した画像検査であり、非常に有用な情報を得ることができます。レポートを読むだけではなく皆さん自身で読影して、日々の診療にぜひ活かして欲しいと思います。

表2: 集積が偽陰性となりうる悪性腫瘍

前浸潤性病変(異型腺腫様過形成, 上皮内腺癌), 微小浸潤腺癌, 浸潤性粘液腺癌
乳腺 非浸潤癌
非充実型低分化腺癌, 印環細胞癌
肝臓 肝細胞癌
膵臓 膵管内乳頭粘液性腺癌
腎臓 腎細胞癌
血液 MALTリンパ腫
硬化性骨転移

表3: 高度集積を生じることがある良性疾患

全般 膿瘍、手術後早期瘢痕、放射線による炎症
頭部 脳炎、髄膜腫、下垂体腺腫
頚部 Graves病、慢性甲状腺炎、副甲状腺腺腫、扁桃腺炎、慢性副鼻腔炎、気管支切開部
胸部 結核、真菌症、肺炎、肉芽腫、サルコイドーシス(肺及び心筋)、縦隔線維症、授乳中乳腺、乳腺炎、食道炎、胸腺過形成
腹部・骨盤 急性・慢性炎症性腸疾患、憩室炎、人工肛門部、慢性膵炎、自己免疫性膵炎、後腹膜線維腫、水腎症
リウマチ性・非リウマチ性関節炎、骨折急性期、骨髄炎、化学療法後・顆粒球コロニー刺激因子投与後骨髄過形成
皮膚・軟部組織 生検部位、皮下注射部位(特にピシバニール)、FDG注射漏れ、尿汚染、血管造影穿刺部(鼠径部など)、皮膚サルコイドーシス、褐色脂肪

※窪田 和雄:FDG-PETの原理と評価法. 画像診断 23:1118-1128, 2003を参考に作成

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 5. 参考文献

  1. 山口 慶一郎・他:正常画像と生理的変動. 画像診断 23 : 1129-1141, 2003
  2. 窪田 和雄:FDG-PETの原理と評価法. 画像診断 23:1118-1128, 2003
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和田 武(わだ たけし)
    ■放射線科専門医
    ■がん研有明病院画像診断部医員/聖路加国際病院放射線科非常勤医/千葉大学大学院医学研究院 画像診断・放射線腫瘍学大学院生/アンター株式会社医師統括部
    ■2016年度聖路加国際病院放射線科チーフレジデント
    ■第101回北米放射線学会 Cum Laude 受賞
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