2018/09/22

Refeeding syndrome(リフィーディングシンドローム)〜NICEガイドライン、リスク評価、救急外来での注意点、早期介入〜

 

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福田 舞(ふくだ まい)
    ■■国保総合中央病院君津中央病院 消化器内科
    ■■所属学会;日本内科学会
    ■■当院は千葉県南部に所在し、地域の中核病院であるとともに3次救急を行っており、ドクターヘリも配備しています。様々な診療科、スタッフ間の多職種連携により高度医療を行うとともに地域医療に貢献しています。アクアラインに直結しておりアクセスが良いことも魅力的です。多くの症例を経験でき、指導体制も整っているために研修医にとっては千葉県内トップ3に入る人気病院です。

低カリウム、低リン血症の患者で疑うRefeeding syndromeリフィーディングシンドローム. どのような時に疑い, どのように対応するのでしょうか.

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中から初期研修医におすすめの選りすぐりの内容を、ご紹介します!

低K, 低P血症. Refeeding syndrome?

refeeding syndromeについて質問です。

患者さんは、MDSでステロイド使用中. 今回は嚥下障害、誤嚥性肺炎で入院していて、長期にわたるむせこみにより低栄養状態になっています。経鼻胃管を挿入したところ、2日後の血液検査で低カリウム、低リン血症を認めました。

Refeeding syndromeを疑ったのですが、上級医からは、それよりステロイドの副作用じゃないかとコメントをもらいました。このように低カリウムの要因が複数考えられる場合、一般的にどう解釈したら良いのでしょうか?

そもそもRefeeding syndromeの診断基準って何なんでしょうか?

初期研修医1年目

Up To Dateには、定義として、栄養不良の患者さんに、積極的な栄養補給を行った際に認められる、体液と電解質のシフトによって起こる合併症であり、潜在的に致命的である、と記載されています。

診断基準は作れなそうですし、もしあったら私も知りたいですね。

患者さんの年代やその他の基礎疾患の情報、服薬状況、、入院時と、2日後の血液データの推移、具体的には電解質、血糖、肝胆道系酵素の推移などがわかるともう少し何か言えるかもしれません。

ちなみに身長、体重や、胃管の内容、投与速度、合併することの多い、ビタミンB1の評価、心電図や呼吸状態等、心血管・呼吸器系の評価も重要です。

副腎不全と、Refeeding syndromeリフィーディングシンドロームは、あっという間に患者さんを持っていかれてしまう疾患なので鑑別の上位に上がってくると思います。

低リン血症の程度にもよりますが、低リン血症は、あまり起こらない特異度の高い所見+命に関わるリスクであるので、低カリウム血症よりも先にアプローチするかもしれません。

総合診療科

74歳でMDSで緩和ケアの男性です。それ以外に基礎疾患は特になしです。内服はセンノシドのみで、注射でフィニバックス(ドリペネム)とバンコマイシン、サクシゾン(ヒドロコルチゾン)が入ってます

カリウムは3.0mEq/Lから2.3mEq/Lに落ちていて、リンは2.9mg/dlから2.3mg/dlに落ちてます。肝胆道系は正常範囲で、血糖は130-150mg/dlを推移してます。

初期研修医1年目

リンは1mg/dlを切ると危なくて、1.5mg/dlを切るとrefeeding syndromeにちょっと気をつけなきゃ、というイメージでやっていました。

そうすると、リンについては急がなくて良いので、低カリウム血症の評価が優先されますね

総合診療科

Refeeding syndromeリフィーディングシンドロームについて学会発表する機会がありましたので共有します。まず、Refeeding syndromeには明確な診断基準はありません。リスク分類をして治療していく必要があります。

Refeeding syndromeリスクのガイドラインは英国のNICEのものが有名です。

そして栄養管理ですが、初期の投与カロリー量は5-10kcal/kg/dayとかなり少なめでした。[→詳しくはポイントレクチャーへ]

消化器内科

Dr.Fukudaの “ポイントレクチャー”

ここではRefeeding syndromeリフィーディングシンドロームの増加傾向である疫学、低P血症を特徴とする病態生理、ガイドライン、ERでの受診の仕方、早期介入について解説します。

君津中央病院 初期研修医 福田 舞 

1. Refeeding Syndromeは増加傾向

Refeeding Syndromeは患者の死亡率が70%と報告されており、早期発見・予防が重要です。

高リスク群の患者背景として高齢者、担癌患者、神経因性食思不振症が上げられ、近年摂食障害による低栄養患者の高齢化も報告されており、一般病院でもRefeeding syndromeに配慮した管理を必要とする症例が増加しています。実際初期研修医の代謝内科の2か月間のローテート中にBMI 10kg/m2前後の患者さん4人を経験しました。

2. 低P血症に注意、Refeeding syndromeの病態生理

Refeeding syndromeとは飢餓状態への栄養投与を行うことにより生じる細胞内への水分移動や電解質移動に伴う症候群と定義されます。低栄養状態では糖の供給が低下してリンを介していない脂質代謝であり、インスリン分泌は低下しています。

ここに糖が供給され、急激に糖代謝が進むことでATPや2.3-DPG産生にてリンが細胞内に移動して消費されることで低P血症となります。低P血症はATP、DNA、RNA、タンパク合成に影響を及ぼし、白血球の走化性や貪食能、血小板凝集能が低下します。

リン脂質合成能が低下することで細胞膜の維持が困難となり、さらに拡散や核タンパク質合成に支障をきたして細胞増殖が困難となります。赤血球のリン酸が欠乏すると溶血性貧血、さらに2.3-DPGの低下は酸素運搬低下をきたして末梢組織への酸素供給が減少します。

また、リンが低いことで心収縮力低下をきたしてさらに低K血症や低Mg血症も不整脈の原因になります。そして低血糖が誘因でカテコラミン濃度が上昇することでたこつぼ型心筋症が引き起こされます。

再栄養によりブドウ糖代謝が亢進して高インスリン状態となることで低K血症ともなり、またインスリンとともにナトリウムが細胞内へ入ることで水分も細胞内へ取り込まれて低Na血症、高浸透圧になります。代謝が急激に更新することでVitB1も使用されてVitB1欠乏になります。

このように低P血症、低K血症、低Mg血症、低血糖、VitB1欠乏は全身に様々な影響を及ぼします。

3. 診断基準はない!NICEガイドラインを参考に

Refeeding syndromeには明確な診断基準がありません。まずはRefeeding syndromeの高リスクの評価をしてNICEのガイドラインに沿って治療計画を立てていきます。

3.1 高リスクの評価(NICEガイドライン)

以下の項目を1つ以上満たすもの

  • ・低体重:BMI<16㎏/m2
  • ・体重減少:3-6か月以内に15%以上の体重減少
  • ・栄養摂取状況:10日間以上ほとんど栄養摂取なし
  • ・電解質異常:栄養前のK,P,Mgが低値

以下の項目を2つ以上満たす患者

  • ・低体重:BMI<18.5㎏/m2
  • ・体重-減少:3-6か月以内に10%以上の体重減少
  • ・栄養摂取状況:5日間以上ほとんど栄養摂取なし
  • ・既往歴:過飲酒、コントロール不良糖尿病、化学療法、制酸剤、利尿薬、担癌患者、高齢者

BMJ. 2008 Jun 28;336(7659):1495-8. をもとに作成>

3.2 治療計画

初期投与カロリー量は10kcal/kg/日から開始し、4-7日間かけて24-48時間ごとに2-4kcal/kg/日ずつ増量させていきます。

ただし、重症(BMIが14㎏/m2以下であるか15日間以上ほとんど栄養摂取していない場合)の場合は5kcal/kg/日から開始します。注意点としてこの時の体重は理想体重ではなく現在の体重です。そしてブドウ糖投与速度は2㎎/㎏/分以下に抑え、投与量は150-200g/日以下とします。

頻回に低血糖を起こしやすいことから、食事を分割食にするという工夫も効果的です。栄養療法開始時の水分量は800ml日に不感蒸泄を加えた量に制限し、さらに高齢者の場合には必要維持水分量の下限と考えられる30ml/㎏/日程度から投与開始として徐々に増量していきます。

微量元素の補充も大切であり、特にVitB1欠乏は心不全やWernicke脳症を引き起こすために投与必須です。具体的にはVitB1 100mgを1日2回投与します。

そして経静脈栄養よりも経口・経腸栄養の方がよいといわれています。

3.3 モニタリング

 少なくとも7日間はNa、K、IP、Mg、BUN、Creは毎日チェックし、心不全・不整脈の合併が多いことから心エコー、ECG検査も行います。また、Rapid turnover protein (プレアルブミン、Retinol binding potein)は再栄養に起因する低リン血症のリスク評価として有効です。

4. ERではこう来るRefeeding syndromeの徴候

救急外来でみられる疾患や徴候を表にまとめてみました。[表1]

症状 疾患 要因
意識障害 低血糖昏睡  
電解質異常 低Na, 低K, 低Cl, 低P血症
Wernicke脳症 Vit.B1 欠乏
悪性症候群  
急性薬物中毒  
糖尿病の合併 インスリン過剰投与、ケトアシドーシス
腹部・消化器症状 急性胃拡張 大食
上腸間膜動脈症候群 大食
逆流性食道炎 自己誘発性嘔吐
食道破裂 自己誘発性嘔吐
Mallory-Weiss症候群 自己誘発性嘔吐
急性膵炎 大食
下剤乱用症候群 下剤大量慢性使用
便秘  
呼吸器症状 誤嚥性肺炎 自己誘発性嘔吐
結核・非結核性抗酸菌症  
気胸・縦隔気腫 やせ、自己誘発性嘔吐
起立性低血圧 やせ
循環器症状 心電図異常・不整脈 低栄養、電解質異常
心不全 低栄養、低P血症、低Se(セレン)血症
タコツボ型心筋症 低栄養
腎・泌尿器症状 腎不全 脱水、横紋筋融解症、低K血症(偽性Barter症候群)
尿管結石  
筋力低下 横紋筋融解症、低K血症
筋・骨格筋症状 テタニー 低K血症、低Ca血症、低Mg血症
骨折 骨粗鬆症、身体能力低下による転倒
神経麻痺 脂肪組織の減少によって圧迫で発症

日本内科学会雑誌 105巻 4号を参考に作成

 5. 早期介入がとにかく大事

Refeeding syndromeは決して珍しくはなく、匙加減の栄養管理を間違えると死亡率が高い危険な病気です。非常に厳密な栄養・電解質管理を必要とします。そして摂食障害・うつ病など精神科疾患とも密接に関わりあっています。多職種で連携し、個々の患者背景に配慮しつつ早期から介入することが大切です。

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6. 参考文献

  1. BMJ. 2008 Jun 28;336(7659):1495-8. doi: 10.1136/bmj.a301.
  2. 日本内科学会雑誌. 105 巻 (2016) 4 号 p. 676-682
  3. 外科と代謝・栄養50巻6号 p.321 2016年12月「重症病態における栄養管理」
  4. 四国医誌 68巻1,2号 p.23-28 April 25, 2012
  5. 日本病態栄養学会誌13(3):227-232 2010
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    ■■国保総合中央病院君津中央病院 消化器内科
    ■■所属学会;日本内科学会
    ■■当院は千葉県南部に所在し、地域の中核病院であるとともに3次救急を行っており、ドクターヘリも配備しています。様々な診療科、スタッフ間の多職種連携により高度医療を行うとともに地域医療に貢献しています。アクアラインに直結しておりアクセスが良いことも魅力的です。多くの症例を経験でき、指導体制も整っているために研修医にとっては千葉県内トップ3に入る人気病院です。
 

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