2018/09/22

症候性てんかん〜定義, ガイドライン, 治療薬, レベチラセタム〜

 

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坂本 壮(SAKAMOTO SO)
    2008年順天堂大学医学部卒。順天堂練馬病院での初期研修を経て,10年に同院救急・集中治療科入局。11年,13年ベストチューター受賞。「何でも診られる医師」になるための経験を積むべく,15年より西伊豆健育会病院に勤務(現在は非常勤)。17年より現職。
    ■■救急科専門医,集中治療専門医,総合内科専門医,ICLSインストラクター。
    ■■著書『救急外来ただいま診断中!』(中外医学社)『ビビらず当直できる内科救急のオキテ』(医学書院)『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』(シーニュ社)

抗てんかん薬では様々な薬剤が使用されていますが、その使い分けはどう考えるのでしょうか。 

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中からプライマリケア医におすすめの内容を、ご紹介します!

症候性てんかん〜定義, ガイドライン, 治療薬, レベチラセタム〜

症候性てんかんの治療において、部分と全般だと使う薬は違うのはわかるのですが、同じ部分てんかんでも、抗てんかん薬の使い分けはあるのでしょうか。

糖尿病内科3年目

基本的には、単純部分発作の第1選択はテグレトールだと思われます。 

ただし、レベチラセタムは、副作用が少なく部分発作の全般化にも全般発作にも使用できる(と言われている)ので、比較的導入しやすいため使われていることが多いです。

救急5年目

実際の使用方法はガイドラインをざっと読むのがいいと思います. 部分と全般を正確に分けることがとにかく重要です. 

部分ならテグレトールです. 

中年以降に発症するてんかんはほぼ全て症候性部分てんかんです. 全般のようにみえても部分発作が全般化したものです. 

そもそもてんかんなのかということが最も重要であることはいうまでもありません. てんかんと診断ついているもののなかに実は心原性や起立性の失神が含まれているので注意です. 

抗てんかん薬は副作用の多い薬なので慎重に開始する必要があります. 

ガイドラインではレベチラセタムは重積のときにも第2候補としてあげられ非常に使いやすい薬になってはきてますが, レベチラセタムにも副作用があるため確認しておくとよいでしょう. 典型的には量が多いと傾眠がちになります. 年齢や体型に応じた用量調節を意識する必要があります.  

レベチラセタムの特徴をざっと 

  • 薬疹は少ない 
  • 精神症状の原因となりやすい 
  • 精神疾患(うつなど)を悪化させやすい 

がありますかね. 使いやすいので使いますが注意も必要ということで.

坂本 壮

既に先生方がお答えいただいている通りだと思います。 

部分発作に対してカルバマゼピンと効果については同等と扱われています。副作用の面でレベチラセタムの方が有利なので、実際、新規処方が増えてきています。 

もう1つの観点としてコストも知っておくと良いかもしれないです。 

レビチラセタムが良い薬というのは前述の通りなのですが、薬剤の価格がカルバマゼピンと比べると一桁違います。医師側としてはカルバマゼピンの激烈な副作用は経験するともう出したくなかったりするのですが、重症薬疹や骨髄抑制は生じる頻度は高いものとまでは言えないので、(ほぼ)一生飲まなければならない薬であることを考えると、患者さんや医師によって意見がわかれるところかもしれません。 

老健施設に入所中だったり、そう遠くない将来入所することが予想できる場合には、渋い顔をされる気がして悩んだりしてます。

神経内科7年目

Dr. Sakamotoの “ポイントレクチャー”

ここでは症候性てんかんに出会う場面、定義、治療薬、レベチラセタム(イーケプラ)についてガイドラインを参考にしながら現場に沿って解説します。

 順天堂大学練馬病院 救急・集中治療科/西伊豆健育会病院 内科 坂本 壮

1. 痙攣に出くわしたら〜症候性てんかんに出会う場面〜

救急外来や病棟では「痙攣」, 一般の外来では「症候性てんかんの診断を受けている」患者を診ることが多いと思います. 外来におけるてんかん患者のフォローでは, 確定診断がつくまでは, 本当にこの患者はてんかんなのかということを意識しておくことが大切です.

心血管性の原因を精査することや, 離脱の可能性も考えておく必要があるのです. 詳細は「てんかん診療ガイドライン1)」を参照してください. ここでは, 痙攣している患者の対応に関して述べます. 

まず, 目の前で痙攣している患者をみたら, まずは止めてよい痙攣か否かをバイタルサインを中心に判断し, 脳血流低下に伴う痙攣でなく, 血圧が保たれていれば, ジアゼパム(セルシン®️)を静注し, 速やかに止めることを考えます2).

痙攣しているからジアゼパムを使用するという単純なものではないことを常に意識して下さい. 脳血流が低下することで引き起こされた痙攣に対して, ジアゼパムを使用すれば, 痙攣だけでなく呼吸, さらには心臓も停止しかねません.

消化管出血に対して緊急内視鏡を行っている最中に患者が痙攣したら, まず考えるべきは脳血流低下に伴う痙攣であって, 症候性てんかんではありません. セルシン®️ではなく, 外液や輸血を投与しましょう.  

2. てんかんの定義〜てんかん診療ガイドライン〜

てんかん診療ガイドライン20181)では「てんかんとは, てんかん性発作を引き起こす持続的素因を特徴とする脳の障害である.」と定義されています. さらに, 「慢性の脳の病気で, 大脳の神経細胞が過剰に興奮するために, 脳の発作性の症状が反復性に起こる. 発作は突然に起こり, 普通とは異なる身体症状や意識, 運動および間隔の変化などが生じる. 明らかなけいれんがあればてんかんの可能性は高い. 」と続きます.

簡単に言えば, 繰り返し起こること, その原因が脳にあることがてんかんの特徴なのです. そのため, 病歴ではいままでの痙攣の歴や精査歴を必ず確認しなければなりません. いままで一度も脳波を行っていなければ, てんかんという病名は再考する必要があるでしょう.

また, 原則として繰り返すことが条件であるため, 24時間以上の間隔で2回以上の非誘発性発作が生じることが条件ですが, 脳卒中発症後1ヶ月以上経過して発作を起こすなど再発リスクが高い場合には1回の発作でもてんかんと診断することはあります. 

※非誘発性発作(unprovoked seizure)
明らかな誘因がない慢性疾患としての自発発作. 急性の脳への侵襲に対する反応(脳卒中や脳炎, 外傷など)によるものは誘発性発作(急性症候性発作とも呼ばれる)と区分けされる. 

3. 症候性てんかんの治療薬〜

「目の前で起こっている痙攣を止めるための薬(発作時の薬)」と「痙攣を起こさせないための薬(発作予防の薬)」は必ずしも同じではありません. 救急外来では, 「てんかん重積状態の治療フローチャート1)」を頭にいれておくとよいでしょう.

以前からの変更点として, 本邦のガイドラインにおいても, 第2段階の使用薬剤にレベチラセタム静注が記載された点が挙げられます. しかし, 後述の通り, いくつかの注意点があります. 

てんかんは発作型によって使用する薬剤が異なるため, きちんと分類する必要があります. てんかん発作型の分類は1981年, てんかん, てんかん症候群および関連発作性疾患の分類は1989年のILAEの分類が本邦では広く使用されています. また, ILAEは2010年に新しい疾患分類も提唱しています. これらは一度目を通しておきましょう1).

非専門医としては, そのてんかんが部分発作(2010年の分類では焦点発作), なのか全般発作なのかを意識することが重要ですが, 中年以降発症するてんかんは, 基本的には症候性部分てんかんと考えてよいでしょう.

痙攣が全身に起こっているようにみえても, それは単純/複雑部分発作から全般発作に移行したものです. 脳梗塞や脳出血など, 中年以降に起こりやすい疾患によって引き起こされた症候性てんかんが多いですよね. これらの疾患の病巣は局在していることから理解できると思います.

つまり, 以前からてんかんの診断が脳波などできちんとついている患者は別として, 高齢者が痙攣し, その原因をてんかんと判断した場合には, 部分発作として薬剤を選択するべきなのです. 3)

4. 最近頻用されるレベチラセタム(イーケプラ®️)

 最近痙攣やてんかん患者に対して頻繁に利用されているのがレベチラセタムです. レベチラセタムは他の抗てんかん薬と異なる作用機序をもち, 薬剤相互作用が少なく, 呼吸抑制や循環動態に対する副作用が少ないことから使用頻度が高まっています4).また, 即効性もあることから, 痙攣重積患者においても第2段階の治療薬として推奨されています.

しかし, なんでもかんでもレベチラセタムという考えはお勧めできません. 常にてんかんの発作型を意識することは前述の通りです. 中里先生の本はわかりやすくまとめられているため通読をお勧めします 3)

レベチラセタムは, 内服薬, 点滴薬共に存在するため, 重積時には静注し, その後内服が可能となれば経口薬へスイッチするという手段がとれるため, 実臨床では非常に使用し易いのは事実です. しかし, 静注薬が採用されていない病院も少なくありません.

また, レベチラセタム静注は, 2018年4月時点では, てんかん重積状態には保険適用外です. 「とりあえずレベチラセタム」では戦えないこともあるため, 発作型や採用薬を意識して事前に症候性てんかん/てんかん重積の患者に対して, 自施設ではどのように対応するかをシミュレーションしておきましょう. 

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5. 参考文献

  1. 日本神経学会監修, てんかん診療ガイドライン作成委員会編集. てんかん診療ガイドライン2018. 医学書院. 2018
  2. 坂本壮. 救急外来ただいま診断中. ③痙攣に出合ったら. 中外医学社. 2015
  3. 中里信和著. ねころんで読めるてんかん診療. メディカ出版. p.56-59
  4. Front Neurol. 2014 Jan 31;5:11. 
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坂本 壮(SAKAMOTO SO)
    2008年順天堂大学医学部卒。順天堂練馬病院での初期研修を経て,10年に同院救急・集中治療科入局。11年,13年ベストチューター受賞。「何でも診られる医師」になるための経験を積むべく,15年より西伊豆健育会病院に勤務(現在は非常勤)。17年より現職。
    ■■救急科専門医,集中治療専門医,総合内科専門医,ICLSインストラクター。
    ■■著書『救急外来ただいま診断中!』(中外医学社)『ビビらず当直できる内科救急のオキテ』(医学書院)『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』(シーニュ社)
 

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