2018/09/22

結核で提出する喀痰検査(三連痰)はなぜ3回か〜理由とニューキノロン、テトラサイクリン系抗菌薬投与時の注意も含めて〜

 

この記事を書いている人 - WRITER -
上原孝紀(うえはら たかのり)
    ■■千葉大学大学院医学研究院診断推論学講師/医学部附属病院総合診療科医局長
    ■■日本内科学会総合内科専門医・指導医
    ■■日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医
    ■■診断推論学を中心とした臨床を核に、研究、教育に取り組んでいます。特色のある総合診療を展開しているので、ご興味がある方は是非一度ご見学に来てください!HP(病院)HP(診療科)Facebook(診療科)見学入力フォーム

結核を疑った場合、診断をつけるために喀痰検査を3回行います。この喀痰検査、なぜ3回なのでしょうか。 

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結核三連痰はなぜ3回か  

 結核の検査に関して質問です。 

結核の否定目的に抗酸菌塗抹を3回出すことを3連痰などと言うと思いますが、こちらは何か推進や文献的な根拠などあるのでしょうか??

救急科

 神戸大学の岩田健太郎先生が、2015年に論文を書いておられます。 これによると、1994年にCDCで3日連続の喀痰塗抹が推奨、最新のCDCガイドラインでは8-24時間間隔で喀痰塗抹推奨と変更になった、とされていますね。 

8時間ごとで良いというエビデンスがなかったので、岩田先生が研究立案。 8時間ごとの喀痰採取で早朝採痰と2回目、3回目採痰に差はなかった、というretrospective studyです。 

西伊豆病院の仲田先生のページにある、2011 lancet セミナー和訳(リンクあり)もわかりやすいです。  

結核塗抹の感度は62-70% 

核酸増幅法を用いて、塗抹陰性患者で、結核の感度は検体1個で72.5%、2個で85.1%、3個で90.2%とされていますね。

上原 孝紀

Dr. Ueharaの “ポイントレクチャー”

結核三連痰の根拠はなんなのでしょうか。ここでは、検査に影響のある抗菌薬の使い方も含めて解説します。 

千葉大学大学院医学研究院診断推論学 医学部附属病院総合診療科 講師  上原 孝紀 

1. 日本は結核の中蔓延国

平成28年の本邦の結核罹患率(10万人当たり)は13.9人であり、減少傾向ではあるものの欧米先進国の10人以下と比較して多く、依然として結核の中蔓延国に分類されています。

結核の診断は画像所見で診断せず、可能な限り細菌学的検査、すなわち抗酸菌塗抹、培養、遺伝子検査で確認することが重要とされています。

細菌学的検査で最も安価かつ簡便なのが塗抹検査ですが、初回の塗抹検査での感度は53.8%とされており(2)、感度が低いことが知られています。そこで感度を高めるために複数回塗抹・培養検査を繰り返す研究が行われました。 

2. なぜ3回検査をするのか

Al Zahrani Kらは、活動性結核と診断したケースで、塗抹検査を1-4回実施した際の感度を報告しました(図1)(3)。 

図1. 抗酸菌塗抹検査を複数回繰り返したときの陽性率(3)  

図1の様に、塗抹・培養の感度は3回目でほぼ頭打ちになってくるため、本邦のガイドラインでは1日1回、連続した3日間の喀痰検査が推奨されています (4)

欧米では採痰方法が異なり、少なくとも8時間の間隔をあけて3回採取し、そのうちの1回は早朝に採痰する、とUpToDateに記載されています(5)

また結核の高蔓延国では、塗抹培養検査が2回で十分とする報告もあります(6)。本邦からもiwataらが後ろ向き研究で、早朝に採痰した検体と、同じ日に追加で2回採取した検体の塗抹検査で感度に差を認めず、隔離解除が1日で出来る可能性について言及しています (7)。今後本邦でもガイドラインが変更されるかもしれません。 

3. ニューキノロン系抗菌薬投与には要注意!

なお上述したAl Zahrani Kらの研究では、採痰実施前14日間に抗結核作用がある抗菌薬を内服した患者は除外している点がプラクティスとして重要です。respiratory quinoloneなどと呼ばれ、呼吸器感染症に安易にキノロンを用いられる傾向がありますが、様々な経過、画像所見を取りうるのが結核です。

細菌性肺炎を疑うのであればペニシリン系やセフェム系の抗菌薬を、異型肺炎を疑うのであればマクロライド系の抗菌薬をまずは検討すべきであり、不要なキノロンの使用は厳に慎むべきです。キノロンが使用されて来院した患者の場合、抗酸菌塗抹培養検査の感度が下がることにも留意しなければなりません。

4. 安易なテトラサイクリン系抗菌薬選択にも注意が必要

また近年、本邦ではアジスロマイシン耐性のマイコプラズマ感染症が増えてきており、その代替治療薬としてテトラサイクリン系抗菌薬が推奨されていますが、テトラサイクリン系抗菌薬は多剤耐性結核の切り札になる可能性が示唆されています(8)

結核の好発年齢は、乳幼児期、思春期、高齢期であり、マイコプラズマの好発年齢である思春期と重なります。マイコプラズマ、結核ともに亜急性の経過となりやすく、非典型的な経過を少なからず取りうること、様々な画像所見を呈しうることなど、類似点が多く認められます。重症ではない異型肺炎を疑う場合は、まずアジスロマイシンを投与して(可能であれば対症療法のみで抗菌薬を使用せずに経過観察して)テトラサイクリンの温存を図ることが重要であると筆者は考えています。

近年国際的に薬剤耐性(AMR: Antimicrobial resistance)に対する行動計画の策定が重視されており、「適切な薬剤」を「必要な場合に限り」、「適切な量と期間」使用することの徹底が求められています(9)。抗菌薬の適正使用を遵守できるよう研鑽を積む必要があります。 

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5. 参考文献

  1. 平成28年結核登録者情報調査年報集計結果. 厚生労働省. 
  2. Mase SR, et al. Yield of serial sputum specimen examinations in the diagnosis of pulmonary tuberculosis: a systematic review. Int J Tuberc Lung Dis. 2007;11(5):485-95.  
  3. Al Zahrani K, et al. Yield of smear, culture and amplification tests from repeated sputum induction for the diagnosis of pulmonary tuberculosis.  Int J Tuberc Lung Dis. 2001 Sep;5(9):855-60.
  4. 日本結核病学会. 結核診療ガイドライン改定第3版. 南江堂. 2015;42. 
  5. J Bernardo. Diagnosis of pulmonary tuberculosis in HIV-uninfected adults. UpToDate. 2017. 
  6. Islam MR, et al. Yield of two consecutive sputum specimens for the effective diagnosis of pulmonary tuberculosis. PloS One. 2013;8(7):e67678 
  7. K Iwata, et al. The validity of three sputum smears taken in one day for discontinuing isolation of tuberculosis patients. Int J Tuberc Lung Dis. 2015;19(8):918-920. 
  8. 川田, 他. ミノサイクリンが有効と思われた超多剤耐性肺結核の1例. Kekkaku. 2008:83(11);725-728. 
  9. 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020. 平成28年4月5日. 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議.  (2017.10.06 ダウンロード) 
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上原孝紀(うえはら たかのり)
    ■■千葉大学大学院医学研究院診断推論学講師/医学部附属病院総合診療科医局長
    ■■日本内科学会総合内科専門医・指導医
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