2018/09/22

閉塞性腎盂腎炎〜定義, リスクファクター, エコー, Low-doseCT, KUBとIVU, 尿検査, ドレナージと抗菌薬治療〜

 

この記事を書いている人 - WRITER -
武信康弘(たけのぶ やすひろ) 東青梅診療所
    院長 日本大学医学部 2001年卒
    日本泌尿器科学会専門医・指導医
    東海大学八王子病院救急科非常勤日本大学医学部 泌尿器科学系泌尿器科学分野研究員東京の西端、青梅市でクリニックを運営しています。専門の泌尿器診療だけでなく、小児~老人の急性期・慢性疾患、マイナーエマージェンシー、メンタルヘルスに至るまで、熱い地域医療を展開しています。青梅の医療の、ゲートキーパーとしての役割を担っていると、頼まれてもいないのに思いこみ、ジェネラルマインドを忘れずに奮闘する日々です。

ERでよく出会う尿管結石. どのような場合に感染を疑うのでしょうか.

この記事は、現場で働く医師同士が相談しあうiOSアプリ “AntaaQA” で実際に行われたやりとりの中から全てのプライマリケア医におすすめの選りすぐりの内容を、ご紹介します!

閉塞性腎盂腎炎〜定義, リスクファクター, エコー, Low-doseCT, KUBとIVU, 尿検査, ドレナージと抗菌薬治療〜

尿管結石を有する患者さんに対して,尿路感染の発症を予測できる因子や重症化の危険因子ってあるのでしょうか?

先日8mm程度の尿管結石で、尿検査では膿尿はなく,亜硝酸塩のみ陽性の患者さんをみました。CTで軽度尿管拡張がある程度で.疼痛コントロールを行って帰宅させましたが,翌日に腎盂腎炎から septic shock に至ってしまいました.

初期研修医

尿検査の結果はあてにならないでしょうね. 私は尿管結石だと思ったらエコーはやっても尿検査は行わないことも多いです.

感染するか否かは初診時に感染を起こしているか否かと同様ですが, バイタルサインや糖尿病などの基礎疾患を考慮して判断しています. そこで疑ったら尿のグラム染色ですね.

また、qSOFAクイックソーファやSIRS criteriaは参考になるでしょう.

  • 閉塞を契機とした感染症
  • 急性閉塞性腎盂腎炎
  • 閉塞性胆管炎

は、容易にショックに陥ることはよく経験します. 受診のタイミングはしっかり伝えるようにしています.

救急科

結石嵌頓による腎盂腎炎は、いまだに怖いです。

糖尿病、ステロイドユーザー、ADLの低下した患者は、容易に結石腎盂腎炎→sepsisに進展します。

ERでは、結石発作→NSAIDS坐薬の対応が多いと思いますが、可能なら、血液検査もほしいです。血液検査により、腎機能の上昇があれば、嵌頓している可能性があります。

結石の治療において、嵌頓結石の場合は、迅速な対応が必要で、なるべく早い段階で、嵌頓した結石に対し、ステント留置、または、腎ろうなどをたてる必要があります。これらの、処置で、水腎を改善することで、経尿道的結石破砕術の際に、スムーズに、結石にアプローチできます。

 本症例では、水腎はなかったと記載がありますが、脱水などを伴う場合、水腎は軽くみえる場合があります。尿検査も、嵌頓結石の場合は、結石より、腎臓側には、膿尿があっても、膀胱側に膿尿がながれてこない場合もあるためあてになりません。

結石の大きさも、1-2mmの結石でも嵌頓する場合があるので大きさで判断する事は難しいです。

武信康弘

Dr. Takenobuの “ポイントレクチャー”

ここでは閉塞性腎盂腎炎の定義、疑うタイミング、画像診断(超音波、低線量CT)、泌尿器科の治療方針に結びつける検査(KUB、IVU)、尿検査、ドレナージと抗菌薬治療について解説します。

東青梅診療所 日本大学医学部泌尿器科研究医 武信康弘
日本大学医学部 泌尿器科学系泌尿器科学分野 大日方大亮

1. 定義〜閉塞性腎盂腎炎とは?〜

 基礎疾患(前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿路結石、尿路悪性腫瘍、尿路カテーテル留置や糖尿病・ステロイド内服などの全身性易感染状態)を合併する複雑性尿路感染症は、時として泌尿器科医によるドレナージ等の介入が必要です(1)。複雑性尿路感染症の中でも、敗血症に至る可能性が高い閉塞性腎盂腎炎について解説します。

2. 疑うパターン〜いつ, どんな時疑うか?

閉塞性腎盂腎炎をきたす疾患の多くが、尿路結石による閉塞を伴う腎盂腎炎です。尿路結石自体は男性の発症が女性と比べ多いですが、尿路結石に伴う閉塞性腎盂腎炎は、男女比は1:2.2と女性に多く、年齢分布は、小児例も散見され、高齢者まで幅広く認められます (2)。尿路結石以外でも、先天性腎尿路疾患(腎盂尿管移行部狭窄症など)や尿管浸潤を伴う悪性腫瘍(消化器癌、婦人科癌など)、外傷やIgG4関連疾患などによる尿管狭窄など、腎盂尿管閉塞をきたす可能性がある疾患では、閉塞性腎盂腎炎の可能性があります(3)

 症状としては、尿路結石に伴う疼痛や発熱・悪寒旋律といった腎盂腎炎の症状のみではありません。Vital signが崩れている場合や、ADLの低下した高齢者では、自覚症状に乏しい症例や、高度の食欲低下、倦怠感、意識障害などの主訴で搬送されてくる場合もあります。以下に尿路結石に伴う閉塞性腎盂腎炎で死亡例となるリスクファクターを示します 表1。

表1

結石に伴う閉塞性腎盂腎炎で死亡例となるリスクファクター

80歳以上

救急車での来院

意識障害

PSの低下

高度の食欲低下

DIC・SIRS

昇圧剤使用

Hamasuna, R., S. Takahashi, H. Nagae, T. Kubo, S. Yamamoto, S. Arakawa & T. Matsumoto (2015)[3]より引用改変

3. 画像診断〜腹部エコー, CTの考え方〜

 ERにおける画像検査で、腹部超音波は必須、さらに単純CTまで施行します。腹部超音波・CTは感度・特異度共に高い検査ですが、ERでは、まず、背部痛を認めた場合、大動脈緊急症の否定が必要です(4)。また、脱水を伴う場合、尿路結石発作でも水腎症の程度が目立たず、水腎症が消失している場合があり注意が必要です。結石の同定は腹部超音波では難しいため、水腎症の有無を確認し、単純CTで結石の局在診断を行います。結石の大きさと、水腎症の程度、腎盂腎炎の重症度は、必ずしも相関しません。閉塞性腎盂腎炎が疑われた場合は、早急な泌尿器科の介入が必要です。

4. 泌尿器科での治療方針に結びつける検査〜KUB腎尿管膀胱X線IVU静脈性尿路造影

KUB(腎尿管膀胱X線)、IVU(静脈性尿路造影)の診断率は感度、特異度ともに低く、結石発作時は造影剤投与による腎盂内圧上昇の問題などもあるため、ERにおける初期診断で施行する検査ではありません(4, 5)。しかし、2回目以降の外来受診では、治療方針に結びつける有用な追加検査となります。KUB腎尿管膀胱X線では結石成分について、レントゲン透過性による推測が可能です。IVU静脈性尿路造影については、水腎症の程度や尿管の蛇行の形態を観察できるので、手術方針を決定時の有用な情報を与えてくれます(6)。また、尿管結石が嵌頓している場合は、患側の造影剤の排泄遅延が認められるため、分腎機能の評価にも役立ちます。

5. Low-dose CTについて

 ERで初期画像診断として施行される腹部単純CTは感度特異度ともに高く、尿路以外の急性腹症の鑑別診断や、嵌頓結石による合併症(腎盂外流出など)の描出も可能です。またレントゲン陰性結石(尿酸結石、キサンチン結石、シスチン結石)の同定も可能です。ただし、放射線被曝量が多い事、腎機能、尿管の形態の情報が得られない事が欠点です。近年は低線量のCT(low‒dose CT)を用いることで、被曝量の減少がすすめられています(6) (5)。肥満者(BMI>30)を除けば、3mm以上の尿路結石については、low‒dose CT では、通常のCTと同様の診断率を得られるとの報告があります。(7, 8) 表2。

表2 

画像検査における放射線被ばく〜感度・特異度の比較
撮影法 被ばく量(mSV) 感度(%) 特異度(%)
超音波   61 97
KUB(腎尿管膀胱単純X線) 0.5-1.0 57 76
IVU(静脈性尿路造影 ) 1.3-1.5 70 95
MRI   82 98.3
単純CT 4.5-5.0 98 97
Low-dose CT 0.9-1.9 96.6 94.9

文献 5, 6, 13をもとに作成

6. 尿検査のみで尿路感染症は判断できない

 尿検査のみで尿路感染症の有無は判断できません尿管結石が嵌頓している場合は、膀胱側に膿尿が流れてこないため、尿定性検査で白血球や亜硝酸塩が陰性でも、尿路感染症の否定はできません(9)

7. ドレナージと抗菌薬治療〜尿管ステント留置、経皮的腎瘻造設術〜

 尿管ステント留置または経皮的腎瘻造設術によるドレナージを施行します。上記選択についてはcontroversialですが、基礎疾患や敗血症の進展により、出血傾向、凝固障害がある場合は、腎瘻は避けるべきです(10)。具体的なタイミングについては、コンセンサスはありませんが、EAU ※1欧州泌尿器科学会/AUA ※2米国泌尿器科学会両ガイドラインで、閉塞性腎盂腎炎に対する緊急ドレナージは推奨されています(11) (12)

 抗菌薬選択については、ドレナージにより採取された膿尿のグラム染色が重要です。敗血症患者に対する抗菌薬の投与量は、腎機能障害の患者含め、初回投与量はSanford Guideなどを参考に、full doseの抗菌薬投与量を用いるべきです。血液培養と薬剤感受性検査結果の判明後は、その結果に基づきde-escalation を施行します。抗菌薬投与期間は2週間です。敗血症を呈している場合は、病態によりさらに長期間の投与が必要な場合があります(1)

略語解説

※1      EAU(European Urological Association):欧州泌尿器科学会

※2      AUA(American Urological Association:米国泌尿器科学会

記事で疑問は解決できたでしょうか?

AntaaQAは医師専用のオンライン相談アプリです。
現場で患者さんの診断治療に困った場合は、AntaaQAで他の医師に相談してみませんか。

みんなで一緒に患者さんの診断治療に取り組みましょう。

また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

8. 参考文献

  1. 山本 新ら. JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015 尿路感染症・男性性器感染症. 感染症学雑誌. 2016;90(1):1-30.
  2. Hamasuna R. Int J Urol. 2015 Mar;22(3):294-300. 
  3. Lameire N. Lancet. 2005;365(9457):417-30.
  4. 山上 浩. 【実践で使えるERのマイナー 診察法の基本とcommon&critical diseaseの診かた】 その他 尿管結石 エコーで見るのは大動脈から!! ERマガジン. 2014;11(3):535-41.
  5. 岡田 淳. 【他科の知識1】 泌尿器科 尿路結石 真の治療は成分分析に基づく成因解明と再発予防. Hospitalist. 2016;4(4):835-47.
  6. Fulgham PF. J Urol. 2013 Apr;189(4):1203-13. 
  7. Poletti PA.AJR Am J Roentgenol. 2007 Apr;188(4):927-33.
  8. Niemann T. AJR Am J Roentgenol. 2008 Aug;191(2):396-401. 
  9. St John A.Am J Clin Pathol. 2006 Sep;126(3):428-36.
  10. Mokhmalji H.  BJ Urol. 2001 Apr;165(4):1088-92.
  11. Assimos D. J Urol. 2016 Oct;196(4):1153-60. 
  12. Turk C. Urologe A. 2016 Oct;55(10):1317-1320.
  13. 日本泌尿器科学会,日本泌尿器内視鏡学会,日本尿路結石症学会(2013)尿路結石症診療ガイドライン,第 2版,金原出版,東京
この記事を書いている人 - WRITER -
武信康弘(たけのぶ やすひろ) 東青梅診療所
    院長 日本大学医学部 2001年卒
    日本泌尿器科学会専門医・指導医
    東海大学八王子病院救急科非常勤日本大学医学部 泌尿器科学系泌尿器科学分野研究員東京の西端、青梅市でクリニックを運営しています。専門の泌尿器診療だけでなく、小児~老人の急性期・慢性疾患、マイナーエマージェンシー、メンタルヘルスに至るまで、熱い地域医療を展開しています。青梅の医療の、ゲートキーパーとしての役割を担っていると、頼まれてもいないのに思いこみ、ジェネラルマインドを忘れずに奮闘する日々です。
 

Copyright© Antaa , 2018 All Rights Reserved.