2018/10/02

化膿性脊椎炎まとめ〜ガイドライン、原因、症状、診断、治療(抗生剤/期間、手術)予後〜

 

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藤井 達也(ふじい たつや)
    ■■Antaa CommunityManager/医療法人社団翠明会山王病院 整形外科/整形外科専門医/日本医師会認定産業医/関東若手医師フェデレーションSV
    ■■"つながる力で医療を支える"をvisionに活動するアンターで、医師同士のつながりをデザインする仕事をしています。整形外科医としては外来、病棟、手術の中でも特に外来での診断にこだわっています(エコーも修行中)。
    ■■Antaaで一緒に活動してくれる医師医学生募集しています! fujiiあっとまーくantaa.jpまで連絡を!

今まさに化膿性脊椎炎の患者を診ている方もいるのではないでしょうか。この記事では2015年のIDSAのガイドライン *1と、関連する文献を元に原因、症状、診断、抗生剤の選択、治療期間、手術適応、予後についてまとめました。

時間のない人のために目次も用意しています。是非、活用してください。
また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひAntaa編集部までご一報ください。

ガイドライン

よく引用されているガイドラインはIDSA(米国感染症学会)が2015年に出した化膿性脊椎炎のガイドラインです。

IDSAのガイドラインには、化膿性脊椎炎を疑うべきシチュエーション(既往歴/並存疾患、身体所見、検査所見)や原因微生物、抗菌薬の選択、治療期間について書かれています。ガイドライン前半にはClinical Questionとサマリ、後半にはエビデンスについてのまとめがありますので参考にしてください。[リンク]

原因/背景

①三大原因
化膿性脊椎炎の原因は下記の3つです。

  1. 血行性(ほかの感染巣からの血行性伝播)
  2. 外傷や整形外科手術による直接浸潤
  3. 近くの軟部組織からの連続性感染

この中で、最も多いのは血行性です。血行性のもととなる感染巣が同定されるのは51%と報告されています(2010 NEJM *2 )。
同定された感染巣の上位3つは下記の通りです。

  1. 尿路感染
  2. 化膿性関節炎
  3. 皮膚/軟部組織感染

[Case Repo] E.coliによる尿路感染症後数週から数か月後に起きた化膿性脊椎炎。56歳男性と64歳女性の2症例.
②血行感染のリスクファクター
化膿性脊椎炎の最多の原因である血行感染のリスクファクターは

  • 糖尿病
  • 心疾患
  • 透析
  • 免疫低下
  • 静注薬物使用

と報告されています。
[Case Repo]小児期のリウマチ熱で弁置換を受けた64歳の化膿性脊椎炎

③起因菌
起因菌が同定されたものの内訳は

  • S.aureus(48%)
  • E.coli(11%)
  • Streptococcal species (9.4%)
  • CNS(2.7%)
  • Pseudomonas auruginosa(2.0%)

であり、黄色ブドウ球菌が最多です。これは血行性感染の起因菌であり、外傷や整形外科手術後の感染の場合とは異なるので注意が必要です。
[Case Repo]ブルセラ症による化膿性脊椎炎と腸腰筋膿瘍
[Case Repo]12歳男児のルモネラ症骨髄炎

症状

初期症状は腰痛86%、発熱が35%~60%と報告されています。発熱のばらつきがあるのは鎮痛薬内服のためであり、元の感染巣の症状も重なると、”症状だけ”から、化膿性脊椎炎を疑うことは難しくなります(2010 NEJM *2)。

IDSAのガイドラインでは病歴、身体所見、血液検査を”総合的にみて疑うべき”とされており。下記の4つの場合を挙げています(それぞれの推奨度は異なりますがここでは同列としています)。

  • 新規または悪化する腰痛、頚部痛とCRP,ESRの上昇
  • 新規または悪化する腰痛、頚部痛と発熱or菌血症or感染性心内膜炎
  • 発熱+神経学的異常所見(背部痛はあってもなくてもよい)
  • 黄色ブドウ球菌菌血症フォロー中の新規局在性の背部痛

臨床でよく経験する観点から言うと
感染の可能性がある高齢患者が安静時の背部痛を訴える場合には、常に化膿性脊椎炎の可能性を考える必要があります。

①身体所見

IDSAのガイドラインには ” 神経学的所見をとる ” と記載があるのみである。これは骨破壊や膿瘍形成により脊髄や神経根に障害が出て、はじめてとれる所見であり、初期には

  • 脊椎叩打痛
  • 棘突起の圧痛

が重要です。ただ脊椎叩打痛を認めるのは化膿性脊椎炎の20%。

②検体検査

●血液検査
血液検査で臨床上有用なものは

  • CRP
  • ESR

の2つです。これらの値は診断への感度が高く、CRPは治療に対する反応にESRより相関すると報告されています。

●血液培養(陽性率58%(30-78%))
血行感染が最多であり、起因菌を同定するために必要な検査です。これで陽性であれば侵襲的な検査(膿瘍の穿刺や椎間板穿刺)を避けることができます。必ず2セット(感染性心内膜炎の合併が疑われる場合は3セット)採取します。陰性の時は

●膿瘍穿刺ドレナージ
膿瘍の合併は、硬膜外膿瘍(17%)、傍脊柱管膿瘍(26%)、椎間板膿瘍(5%)とされています。膿瘍がある場合、CTガイド下ドレナージを施行し、さらなる侵襲的検査である骨生検を回避します。

●椎間板穿刺
椎間板にまで感染が波及している場合は椎間板穿刺で起因菌を特定します。整形外科へのコンサルトが必要です。各種培養検査が陰性の場合CTガイド下生検が勧められています。

● CTガイド下骨生検
こちらも画像検査で感染が疑われる椎体の骨生検を行い起因菌を特定します。整形外科へのコンサルトが必要です(生検組織の培養は血培よりも診断がより確実で、培養陽性率は77%)。肉芽種の存在はブルセラ症や結核を想起します。

②画像検査

単純X線
3-6週間経過した化膿性脊椎炎では椎体終板のerosion(侵食像)所見を認めることがあります(感度は低い)。
ただ、早期診断には有効ではありません。

●CT
単純X線に加えて、造影すると膿瘍検索に有用です。写真はerosionのCT画像です。

2006 Hong Kong Med J *3のFigure.1より引用

●MRI
脂肪抑制T2WIもしくはSTIRが骨髄の浮腫の描出に最も有効であり、早期診断に有効と複数報告されています(2012 Eur Rev Med Pharmacol Sci *4 / 2016 Br Med Bull *5)。
[Case Repo]63歳男性の黄色ブドウ球菌による胸椎の化膿性脊椎炎。CT・MRI画像

治療/抗生剤

エンピリックな抗菌薬選択の考え方

  • セファゾリン(CEZ)2g 6-8時間毎 静注

通常起炎菌はグラム陽性球菌感染のことが多く、CEZを選択します。
ただ、グラム陰性桿菌が否定できない場合は

  • セフトリアキソン(CTRX)2g 12時間毎 静注

が一般的です。もちろん長期入院患者や術後の患者、施設入所中の患者、また以前にMRSAや緑膿菌、ESBLがはっきりしている場合は、初期から、それらをカバーする抗生剤を選択します(抗菌薬の選択は下記②に準じます)。

②培養結果に基づいた抗菌薬選択

文献によって選択が異なるので、日本で採用されているものの中から選択肢を提示します。①が第一選択、②以降は第一選択薬がアレルギー等で使用できない場合に考えます。詳しくは文献の表を引用します。

MSSA、CNS
 ①セファゾリン(CEZ) 1-2g 8時間毎
 ②レボフロキサシン(LVFX) 750mg 12時間毎 経口
  + リファンピシン(REP) 300mg 12時間毎 経口
 ③バンコマイシン(VCM) 1g 12時間毎 静注 (トラフ値は15-20ug/ml)

MRSA
 ①バンコマイシン(VCM) 1g 12時間毎 静注 (トラフ値は15-20ug/ml)
 ②ダプトマイシン(DPM) 6mg/kg 24時間毎 静注
 ②リファンピシン(REP) 300mg 12時間毎 経口
  + レボフロキサシン(LVFX) 750mg 24時間毎 経口
 ②リネゾリド(LZD)600mg 12時間毎 静注or経口
Streptococcal species
 ①ペニシリンG(PCG) 500万単位 6時間毎 静注
 ②セフトリアキソン(CTRX) 2g 24時間毎 静注
Enterobacteriaceae
 ①シプロフロキサシン(CPFX) 750mg 12時間毎 経口
 ②セフトリアキソン(CTRX) 2g 24時間毎 静注
Enterobacteriaceae(ESBL)
 ①イミペネム(IMPM) 500mg 6時間毎 静注
Pseudomonas auruginosa
 ①セフェピム(CEPM) or セフタジジム(CAZ) 2g 8時間毎 静注
  + アミノグリコシド2-4週 静注考慮
  →その後シプロフロキサシン(CPFX) 750mg 12時間毎 経口
 ②ピペラシリンタゾバクタム(PIPC/TAZ) 4.5g 6時間毎
  + (+ アミノグリコシド2-4週 静注考慮) 
  →その後シプロフロキサシン(CPFX) 750mg 12時間毎 経口
anaerobic flora
 ①クリンダマイシン(CLDM) 300-600mg 6-8時間毎 静注
 ②ペニシリンG(PCG) 500万単位 6時間毎 静注(Propionibacterium acnesに対して)
 ②セフトリアキソン(CTRX) 2g 24時間毎 静注(Propionibacterium acnesに対して)
 ②メトロにダゾール 500mg 8時間毎 経口

▶︎引用① 2015 IDSAガイドライン

▶︎引用② 2010 NEJM

治療/期間

ガイドラインに掲載されている抗菌薬の治療期間は ” 6-8週間 ” です。また、病変部位が少なく、感染性心内膜炎(IE)や膿瘍などの合併症の少ない化膿性脊椎炎では、6週間の治療で十分とされていますが、IEや膿瘍の合併がある場合はより長期間の抗菌薬治療が必要になる場合もあります(2015  Lancet *6

他の報告では、治療後4週後に効果判定を行い、臨床所見(発熱、疼痛)改善ない症例やCRP 3㎎/dl が持続する場合は治療効果不十分と判断するとの記載があります。
またMRIによる画像フォローアップでの注意点として、経過良好でもMRIは初期に病変部が増大することもありうることが挙げられます。(2010 NEJM *2)。

治療/手術

手術(外科的治療)が必要になるのは10-20%とされ(2012  Int Orthop *7)、手術適応は

  1. 抗菌薬治療が効いていない場合
  2. 脊髄圧迫所見がある場合
  3. 硬膜外膿瘍、傍脊椎膿瘍、腸腰筋膿瘍がありドレナージを要する場合

の3つの場合です(2010 NEJM *2)。

死亡率は0-11%と報告されています(2012 Eur Rev Med Pharmacol Sci *8)。また、骨への影響は治療がうまくいっても1-2年と言われており、単純レントゲンでの改善は時間がかかることを最初に説明しておくことが重要です。

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終わりに/参考文献

化膿性脊椎炎の正しい初期対応を身につけることは研修医にとって絶対(MUST) です。抗生剤選択に関しては、local factorも考慮する必要がありますので細菌検査室やICT、感染症科医とも相談の上決めてください。

●参考文献

  1. IDSAガイドライン  Clin Infect Dis (2015) 61 (6): e26-e46.
  2. N Engl J Med. 2010 Mar 18;362(11):1022-9.
  3. Hong Kong Med J. 2006 Oct;12(5):391-3.
  4. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2012 Apr;16 Suppl 2:8-19.
  5. Br Med Bull. 2016 Mar;117(1):121-38.
  6. Lancet. 2015 Mar 7;385(9971):875-82.
  7. Int Orthop. 2012 Feb;36(2):397-404.
  8. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2012 Apr;16 Suppl 2:2-7.
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